給電装置は、クレーンに給電するための装置で、様々な方法がクレーンに用いられています。
トロリ線給電は、トロリ線( 接触電線 )を用いてクレーンに給電する方法で、屋内に設置されている天井クレーン等に広く用いられている。トロリ線及び集電子は、クレーン又は建屋から絶縁する必要があるため、碍子等の絶縁物によって支持されて取付けられている。トロリ線の施設の方法、取付間隔、構造物からの離隔距離、トロリ線の太さ等は法令によって定められている。
イヤーと呼ばれる支持金具によってトロリ線をつり下げ、パンタグラフの集電子をバネの力でトロリ線に押し付けて集電する。
碍子に支えられたトロリ線を集電子ですくい上げて集電するもので、小容量のクレーンに用いられている。すくい上げ式やイヤー式の充電部は露出しているため、設置場所によっては人が接触して感電する恐れがある。
金属ダクト内の絶縁物を介して平銅バーを取付け、その内部をクレーンのトロリシューが移動しながら集電する。集電する部分以外をダクトで被った充電部の露出が少ない給電方法のため、イヤー式やすくい上げ式に比べて安全性が高い。
すべてのトロリ線をすその開いた絶縁物で被い、すその間から集電子がトロリ線(図の導体部分)に接触して集電するため、他の給電方式よりも安全性が極めて高い。
トロリ線給電に用いられる配線材料、給電装置、集電子等には、次のようなものがある。
トロリ線の配線材料には、次のような形の円形硬銅トロリ線、溝付硬銅トロリ線、平銅バー、アングル銅バー、レール等が用いられている。
トロリ線とそれを支持する物との間を絶縁する器具。硬質磁器で作られた碍子等が用いられている。
トロリ線から電力を取込む集電装置は、トロリ線の方式によってパンタグラフや固定形等が用いられている。パンタグラフは、給油によって動きを容易にして接触不良にならないように注意しなければならない。
トロリ線に接触する集電子には、ホイールやシューが用いられている。集電子の材質には、電気を取り込みやすい砲金(銅90%、錫10%の青銅の一種)、カーボン(炭素)、黒鉛、特殊合金等の導体が用いられている。
キャップタイヤケーブル給電は、導体を天然ゴム等で厚く被覆し、伸縮や屈曲に耐えられる丈夫なケーブルを用いた露出部分がまったくない安全性が高い給電方式。爆発性のガスや粉塵の発生する恐れのある場所では、キャブタイヤケーブルを用いた防爆構造の給電方式が多く用いられている。キャップタイヤケーブル給電には、ケーブルをそのまま引きずる方法の他に次のような方式がある。
カーテンケーブル式は、ケーブルハンガーにケーブルをカーテン状に垂らし、クレーンの移動と共に伸縮させる最も単純な方法。
ケーブル巻取式には、クレーンの移動に伴って電動機の動力でケーブルをドラムに巻取る方式と、ゼンマイやおもりでケーブルを巻取る方式がある。これらの方式は、ケーブルドラムに集電子及びスリップリングを設け、これによってクレーンに給電している。
リンクチェーン式は、リンクしているチェーンの中にケーブルを取付けている。変形する特殊なチェーンを用いているため、特殊チェーン式とも呼ばれている。この方式は、クレーンの桁を横行するクラブトロリの給電等の短距離給電に適している。なお、リンクチェーン式は送油用のゴムパイプにも用いられている。
ケーブルキャリア式は、ケーブルホイールを両側に備えたキャリアがガイドレールの上を移動して給電する方式で、リンクチェーン式と同じ用途や特徴を有している。
スリップリング給電は、クレーンの旋回体やケーブル巻取式等の回転する部分に給電するもので、中央のリングとその周辺に配置された集電子で構成されている。回転側に集電子(集電ブラシ)、固定側にリングを取付け、集電子がリング面上を周動して集電するため、旋回体は自由に旋回することができる。また、スリップリングの回転側にリング、固定側に集電子を取付けているものもある。一般にリングには砲金を用い、集電子には砲金や黒鉛が多く用いられている。