軸 / キー / 軸受等

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 軸は、回転によって動力を伝える機械的要素です。キーは軸から他の歯車等に動力を効率良く伝えるための機械的要素です。機械的要素とは、機械を構成する最小の単位のことで機素ともいいます。


 軸は、動力の伝達や回転体を支えるために用いられるもので、電動機の主軸のように回転力を伝える回転軸(伝動軸)と電車や自動車等の回転する車輪を支える固定軸(車軸)がある。また、固定軸には車軸が回転しないものと、車輪と一体となって回転するものがある。

          
         回転軸             固定軸

キー

 キーは、歯車、車輪、ドラム等を軸に固定して動力を伝えるために用いられるもので、キー溝があるものとないものに分けることができる。一般にキー溝がないものは軽荷重用、キー溝があるものは動力伝達用に使用されている。なお、軸に取付ける機械的要素側はボスと呼ばれている。

 ● 軽荷重用のキー

 軽荷重用のキーには、くらキーと平キーかある。くらキーは、ボス側をキー溝加工、キーの下面は円弧状に加工し、キーとボス側に勾配を付けている。平キーは、キーが接触する軸の面を平面に切削加工し、ボス側の溝に勾配を付けている。これらのキーは、大きな荷重の作用する箇所での使用や正転逆転には適さないため、軽荷重用に使用されている。

          
          くらキー               平キー

 ● 動力伝達用のキー

 動力伝達用には、沈みキーが最も多く使用されている。 軸とボスの両方にキー溝加工を施し、この溝にキーをはめ込んで使用する。 キーの側面で動力を伝達できるため、 高速回転用や重荷重用に適している。沈みキーには、キーに勾配がない平行キーと、抜け出ることがないようキーに100分1の勾配を付けた勾配キー(打込キー)がある。

             
          平行キー               勾配キー

 ● 安全カバー及びキー板

 運転中に抜け出る恐れがあるキーには抜け止めを設け、回転部分が露出して人が接触する恐れがあるものには安全カバーを設ける必要がある。キー板(キープレート)は、軸を固定して軸の回転を防ぐと共に軸方向への抜け出しを防止するために用いられている。

           
        抜け止め及び安全カバー              キー板

軸受

 軸受は、軸の回転部分を支えて軸を円滑に回転させるもので、滑り軸受や転がり軸受等がある。

 ● 滑り軸受(平軸受)

 滑り軸受は、軸が軸を支える面で滑り運動を行うもので、 筒形の一体軸受や割形の軸受がある。一般には、軸の取出しや交換が容易な割形軸受が用いられている。軸受本体は鋳鉄又は鋳鋼製で、軸を支える軸受金(ブッシュ又はメタルという)には青銅(銅と錫を主成分とした合金)やホワイトメタル(鉛や錫等の軟質を主体とした金属) が用いられている。滑り軸受は、高速、高荷重、衝撃荷重に強く、運転中の振動や騒音が少ない。良好な潤滑状況を保てば磨耗しにくく、寿命は半永久的といえる。

           
           割形軸受 滑り軸受の構造         割形軸受

 ● 転がり軸受

 転がり軸受は、玉やころによって摩擦抵抗を少なくしたもので、ボールベアリングを用いた玉軸受と、ローラベアリングを用いたころ軸受がある。回転時の摩擦抵抗が非常に小さく、動力の損失が少なため、クレーン各部の軸受に使用されている。

           
             玉軸受                ころ軸受

 転がり軸受は、荷重を受ける方向によって分類することができる。軸に直角な方向に作用する荷重をラジアル荷重、軸方向に作用する荷重をスラスト荷重といい、これらの荷重に対応した軸受をラジアル軸受、スラスト軸受という。その他に両方の機能を有する軸受もある。また転がり軸受を用いたプランマブロック(ころ又は玉軸受による軸受箱)や転がり軸受ユニット(軸受と軸受箱が一体になったもの)等も使用されている。

             
                プランマブロック

         
              ラジアル軸受               スラスト軸受

軸継手(カップリング)

 軸継手は、軸と軸をつないで動力を伝える。クレーンには、使用箇所や使用条件に応じて次のようなものが使用されている。

 ● 割形軸継手

 割形軸継手は、鋳鉄製の円筒を2つ割にした形で、筒の中に軸を入れてボルトで締め付けて回転力を伝えるもので、軸方向に軸を移動させることなく軸の取出しや取付けが容易に行える。このため、橋形クレーンの走行長軸のような回転の遅い箇所に使用されている。

         

 ● フランジ形固定軸継手

 フランジ形固定軸継手は、2つの軸端に取付けたフランジをリーマボルトでつなぎ合せたものである。フランジ面の軸心を合せるために、一方を凸部、もう片方を凹部加工し、リーマボルトのせん断力で回転を伝達している。 全面機械仕上げによるものはバランスが良いため、高速回転を行う箇所で使用されている。なお、形状に関わらず縁、出っ張り、つば状のものをフランジという。

     

 ● フランジ形たわみ軸継手

 フランジ形たわみ軸継手は、フランジの一方のボルト穴を大きくし、フランジとボルトの間にゴム又は皮革等の弾力性のある材料を結合部分にはめている。これにより、起動や停止時の衝撃ならびに荷重の変化によるたわみ(二輪の僅かなずれや傾き)の影響を緩和し、軸の損傷や軸受の発熱を防いでいるが、軸心の狂いの許容度はそれ程大きくない。この継手は、電動機と減速装置の連結に使用されているが、ブレーキホイールとしても使用されることがある。

        

 ● その他のたわみ軸継手

 ローラチエーン軸継手は、2列のローラチエーンと2個のスプロケットからなるもので、ピンの抜き差しによって容易に連結や分解を行うことができる。歯車形軸継手(ギヤカップリング)は外筒と内筒からなり、左右の外筒はリーマボルトで固着されている。外筒の内歯車と内筒の外歯車の噛み合いによって動力を伝達しているが、外歯車にクラウニング(歯当たりの調整)を施しているため2軸の中心線にずれや傾きがあっても円滑に回転させることができる。これらの軸継手には、一般に潤滑材が使用されている。自在軸継手((ユニバーサルカップリング)は、2つの軸の中心線が一直線にない走行長軸等に使用されている。

          
        ローラチエーン軸継手   歯車形軸継手         自在軸継手

車輪

 車輪は、構造物を支えて回転しながら移動するもので、一般に脱輪を防止するために 車輪にフランジが付けられている。横行に用いる車輪を横行車輪、走行に用いる車輪を走行車輪といい、駆動する車輪を動輪、駆動しない車輪を従輪という。 車輪には鋳鋼製や鍛鋼製が多く使用されているが、中にはゴムタイヤを使用したものがある。

          
       動輪        従輪

ドラム

 ドラムは、ワイヤロープを巻き取るもので、クレーンのドラムの表面にはロープを正しく巻き取ると同時に損傷を防ぐための溝が設けられている。ワイヤロープが小さな半径で曲げられると、曲げ応力が大きくなってワイヤロープの寿命を縮める。このため、ワイヤロープの構成材質、使用条件に応じてロープ径とドラム径の比が構造規格によって定められている。
 クレーンのドラムの表面には、ロープを正しく巻き取ると同時に損傷を防ぐための溝が設けられている。 デリックは、クレーンと同様のものを使用しているものもあるが、その多くは溝なしドラムが使用されている。溝なしドラムは、ワイヤロープのフリートアングル(ドラム又はシーブの軸に直角な線とロープが実際に引っ張られる方向とのなす角度で、偏角ともいう)が2°以内に制限されている。これにより、ドラムに巻き取るワイヤロープの乱巻を防止している。溝付きドラムの場合は、フリートアングルが4°以内に制限されている。フリートアングルの制限を超えた場合は、ワイヤロープが乱巻きになることがある。乱巻きのままクレーンを使用すると、ロープが傷むばかりでなく、大きな事故につながる恐れがあるため、乱巻きには注意しなければならない。

          
         ドラム          フリートアングル

シーブ / エコライザシーブ

 シーブは、ワイヤロープを案内する滑車です。ロープが外れたり変形することがないようにロープ径に応じた溝が設けられている。シーブの溝底に巻いたワイヤロープの直径間の距離をシーブ径といい、ロープの構成、材質、使用条件に応じてシーブ径とワイヤロープ径の比がクレーン等構造規格によって定められている。
 つり合いロープ車ともいうエコライザシーブは、巻上装置や起伏装置等のドラムの両端からワイヤロープを巻き取る時のロープの折り返しに配置され、左右のワイヤロープの張力をつり合せるために使用されるもので、ほとんど回転しない。クレーンのエコライザシーブの直径はワイヤロープの材質や構成に関わりなく、クレーンの使用条件によって定められている。

            
        シーブ                エコライザシーブ
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