クレーン・デリック運転士免許は、操作に必要な一定の技量を有していることの証として交付されます。この「士」には、専門の技術を修めた者という意味があります。士の付く職業は、貴いものとされ、社会から認められています。
ただし、これは職責に対する志から生まれるものだといえます。
事業者は、次の各号に掲げるクレーンの運転の業務に労働者を就かせる時は、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行わなければならない。
1.つり上げ荷重が5t未満のクレーン
2.つり上げ荷重が5t以上の跨線テルハ
特別の教育は、次の科目について行わなければならない。
1.クレーンに関する知識
2.原動機及び電気に関する知識
3.クレーンの運転のために必要な力学に関する知識
4.関係法令
5.クレーンの運転
6.クレーンの運転のための合図
クレーン等安全規則第21条
本条は、安全のための特別の教育を修了した者は、5t未満のクレーンの運転ならびにつり上げ荷重が5t以上の跨線テルハの業務に就くことができると規定したものである。上級資格であるクレーン・デリック運転士免許を有する者は、特別の教育を受ける必要はない。跨線テルハ(こせんテルハ)とは、鉄道において手荷物を積載した車等をつり上げ、線路を超えて運搬するクレーンをいう。
事業者は、労働者を雇い入れた時は、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。この規定は、労働者の作業内容を変更した時について準用する。事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせる時は、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
労働安全衛生法第59条
本条は、 労働災害を防止するため、 事業者の責任においてクレーンの運転の業務に従事する労働者に特別の教育を実施することを義務付けたものである。 特別の教育に要した時間は、労働時間と解され、企業外で特別の教育を受けさせる場合の講習会費ならびに旅費等は、 事業者が負担すべきものである。
事業者は、令第20条第6号に掲げる業務については、クレーン・デリック運転士免許を受けた者でなければ当該業務に就かせてはならない。ただし、床上で運転し、かつ、当該運転する者が荷の移動と共に移動する方式のクレーン(以下、床上操作式クレーンという。)の運転の業務については、床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができる。
クレーン等安全規則第22条
令第20条第6号に掲げる業務とは、つり上げ荷重が5t以上のクレーン(跨線テルハを除く。)の運転の業務をいう。したがって、本条は、つり上げ荷重が5t以上のクレーン(跨線テルハを除く。)の運転業務に就かせる時は、クレーン・デリック運転士免許を受けた者(クレーン限定免許及び旧クレーン運転士免許を受けた者を含む。)でなければならないこと、床上操作式クレーンについては、床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができることを規定したものである。床上操作式クレーンには、無線操作方式ならびにメッセンジャー方式等の運転する者が荷と共に移動しない方式のクレーンは含まない。
クレーン・デリック運転士免許は、次の者に対し、都道府県労働局長が与えるものとする。
1.クレーン・デリック運転士免許試験に合格した者
2.クレーン・デリック運転士免許試験の学科試験に合格した者で、当該学科試験が行われた
日から起算して1年以内にクレーン運転実技教習を修了した者
3.床上運転式クレーンに限定したクレーン・デリック運転士免許を受けたもので、 クレー
ン・デリック運転士免許試験の学科試験のうち、デリックに係る部分の科目に合格し、当
該学科試験が行われた日から起算して1年以内にクレーン運転実技教習(床上運転式クレ
ーンを用いて行うものを除く。)を修了した者
4.クレーンに限定したクレーン・デリック運転士免許を受けたもので、クレーン・デリック
運転士免許試験のデリックに係る部分の科目に合格した者
5.能開法第27条第1項の準則訓練である普通職業訓練の内、揚重運搬機械運転系クレーン運
転科もしくは 揚重運搬機械運転系港湾荷役科又は能開法規則別表第4の訓練科の欄に掲げ
るクレーン運転科もしくは港湾荷役科の訓練(通信の方法によって行うものを除く。)を
修了した者で、クレーン及びデリックについての訓練を受けた者
6.その他厚生労働大臣が定める者
クレーン等安全規則第223条
本条は、クレーン・デリック運転士免許を受けることができる者について定めたものである。
都道府県労働局長は、次の者に対し、その取り扱うことのできる機械の種類を床上運転式クレーンに限定してクレーン・デリック運転士免許を与えることができる。
1.クレーン・デリック運転士免許試験の学科試験のうち、クレーンに係る部分の科目に合格
した者(クレーン限定学科試験合格者)で、床上運転式クレーンを用いて行う実技試験に
合格した者
2.クレーン限定学科試験合格者で、当該学科試験が行われた日から起算して1年以内に床上
運転式クレーンを用いて行うクレーン運転実技教習 を修了した者
クレーン等安全規則第224条の4第1項
本条は、床上運転式クレーンに限定したクレーン・デリック運転士免許を受けることができる者について定めたものである。床上運転式クレーンとは、床上で運転し、かつ、運転する者がクレーンの走行と共に移動する方式のクレーンをいう。ただし、床上操作式クレーン及び無線操作方式のクレーンは含まない。
都道府県労働局長は、次の者に対し、その取り扱うことのできる機械の種類をクレーンに限定してクレーン・デリック運転士免許を与えることができる。
1.クレーン限定学科試験合格者で、クレーン・デリック運転士免許試験の実技試験に合格し
た者
2.クレーン限定学科試験合格者で、当該学科試験が行われた日から起算して1年以内にクレ
ーン運転実技教習 を修了した者
3.取り扱うことのできる機械の種類を床上運転式クレーンに限定したクレーン・デリック運
転士免許を受けている者で、クレーン・デリック運転士免許試験の実技試験のうち、クレ
ーンの運転に合格し、又はクレーン運転実技教習 を修了した者
4.その他厚生労働大臣が定める者
クレーン等安全規則第224条の4第2項
本条は、クレーンに限定したクレーン・デリック運転士免許を受けることができる者について定めたものである。
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えない。
1.免許を取り消され、その取消しの日から起算して 一年を経過しない者
2.免許の種類に応じて、厚生労働省令で定める者
労働安全衛生法第72条第2項
労働安全衛生法第72条第2項第2号の厚生労働省令で定める者は、満18歳に満たない者とする。
クレーン等安全規則第224条
本条は、満18歳に満たない者には、免許を与えないと規定している。
クレーン等の免許については、心身の障害により当該免許に係る業務を適正に行うことができな い者として厚生労働省令で定める者には、免許を与えないことがある。
労働安全衛生法第72条第3項
クレーン・デリック運転士免許に係る法第72条第3項の厚生労働省令で定める者は、身体又は精神の機能の障害により当該免許に係る業務を適正に行うに当たって必要なクレーンもしくはデリックの操作又はクレーンの周囲の状況の確認を適切に行うことができない者とする。
クレーン等安全規則第224条の2
都道府県労働局長は、身体又は精神の機能の障害がある者に対して、その取り扱うことのできる機械の種類を限定し、その他作業についての必要な条件を付して、クレーン・デリック運転士免許を与えることができる。
クレーン等安全規則第225条
本条は、身体又は精神の機能の障害がある者に対し、作業内容に条件を付け、特定のクレーン等を限定した上で免許を与えることができると規定している。
免許を現に受けている者は、当該免許と同一の種類の免許を重ねて受けることができない。
労働安全衛生法第64条
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局 長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者、
その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、 当該業務に就かせてはならない。 当該業務に就くことができる者以外の者は、当該業務を行ってはならない。当該業務に就くことができる者は、当該業務に従事する時は、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。
労働安全衛生法第61条
本条は、クレーン等の運転の業務には、有資格者でなければ当該業務に就かせてはならず、クレーン等の業務に従事する時は、免許証等を携帯していなければならないと規定している。
免許証の交付を受けた者で、当該免許に係る業務に現に就いている者又は就こうとする者のは、これを滅失し、又は損傷した時は、免許証再交付申請書を免許証の交付を受けた都道府県労働局長又はその者の住所を管轄する都道府県労働局長に提出し、免許証の
再交付を受けなければならない。
労働安全衛生規則第67条第1項
当該免許に係る業務を行うためには、免許証を携帯していなければならない。したがって、業務に現に就いている者や就こうとする者は、免許証を滅失又は損傷した時には
再交付を受けなければならない。当該免許に係る業務に就いていない者又は就く予定もない者は、免許自体が不要のため、再交付を受ける必要はない。
免許証の交付を受けた者で、当該免許に係る業務に現に就いている者又は就こうとする者は氏名を変更した時は、免許証書替申請書を免許証の交付を受けた都道府県労働局長又はその者の住所を管轄する都道府県労働局長に提出し、免許証の書替えを受けなければならない。
労働安全衛生規則第67条第2項
当該免許に係る業務に現に就いている者又は就こうとする者は、氏名を変更した時には免許証の書替えを受けなければならない。 住所や本籍の変更は、免許証を書替える必要はない。当該免許に係る業務に就いていない者又は就く予定もない者も免許自体が不要のため、書替える必要はない。
事業者は、次の場合は、遅滞なく、報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
1.クレーン(つり上げ荷重が0.5t未満のクレーンを除く。)の次の事故が発生した時
イ 逸走、倒壊、落下又はジブの折損
ロ ワイヤロープ又はつりチェーンの切断
2.移動式クレーン(つり上げ荷重0.5t未満の移動式クレーンを除く。)に次の事故が発生
した時
イ 転倒、倒壊又はジブの折損
ロ ワイヤロープ又はつりチェーンの切断
3.デリック(つり上げ荷重が0.5t未満のデリックを除く。)の次の事故が発生した時
イ 倒壊、ブームの折損
ロ ワイヤロープの切断
労働安全衛生規則第96条
事業者は、労働災害その他就業中又は事業場内もしくは、その附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業した時は、遅滞なく、報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。休業の日数が4日に満たない時は、事業者は1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月までの期間における当該事実について、報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働安全衛生規則第97条
厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、事 業者、労働者、機械等貸与者又は建築物貸与者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずる時は、次の事項を通知するものとする。
1. 報告させ、又は出頭を命ずる理由
2. 出頭を命ずる場合に、聴取しようとする事項
労働安全衛生規則第98条
都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合において、その再発を防止するため必要があると認める時は、当該労働災害に係る事業者に対し、期間を定めて、当該労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者(以下、労働災害防止業務従事者という。)に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができる。指示を受けた事業者は労働災害防止業務従事者に同項の講習を受けさせなければ
ならない。講習の科目その他の講習について必要な事項は、厚生労働省令で定め る。都道府県労働局長は、 業務に就くことができる者が、当該業務について、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反して労働災害を発生させた場合において、その再発を防止するため必要があると認める時は、その者に対し、期間を定めて都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けるよう指示することができる。
労働安全衛生法第99条
都道府県労働局長は、免許を受けた者が第72条第2項第2号に該当するに至った時は、その免許を取り消さなければならない。
労働安全衛生法第74条第1項
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えない。
1.免許を取り消され、その取消しの日から起算して 1年を経過しない者
2.前号に掲げる者の他、免許の種類に応じて、厚生労働省令で定める者
労働安全衛生法第72条第2項
厚生労働省令で定める時は、次の通りとする。
1.当該免許試験の受験についての不正その他の不正の行為があった時。
2.免許証を他人に譲渡し、又は貸与した時。
労働安全衛生規則第66条
都道府県労働局長は、免許を受けた者が次の各号のいずれかに該当するに至った時は、その免許を取り消し、又は期間(第1号、第2号、第4号又は第5号に該当する場合にあっては、6月を超えない範囲内の期間)を定めてその免許の効力を停止することができる。
1.故意又は重大な過失により、当該免許に係る業務について重大な事故を発生させた時。
2.当該免許に係る業務について、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反した時。
3.当該免許がクレーンの運転その他の業務で政令で定める免許である場合にあっては、
心身の障害により当該免許に係る業務を適正に行うことができな い者となった時。
4.免許の許可条件に違反した時。
5.前各号に掲げる場合の他、免許の種類に応じて、厚生労働省令で定める時。
第3号に該当し、同項の規定により免許を取り消された者であっても、その者がその取消しの理由となった事項に該当しなくなった時、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認
められるに至った時は、再び免許を与えることができる。
労働安全衛生法第74条第2項
免許の取消しの処分を受けた者は、遅滞なく、免許の取消しをした都道府県労働局長に免許証を返還しなければならない。免許証の返還を受けた都道府県労働局長は、当該免許証に当該取消しに係る免許と異なる種類の免許に係る事項が記載されている時は、当該免許証から当該取消しに係る免許に係る事項を 抹消して免許証の再交付を行うものとする。
労働安全衛生規則第68条
免許には、有効期間を設けることができる。都道府県労働局長は、免許の有効期間の更新の申請があった場合には、当該免許を受けた者が厚生労働 省令で定める要件に該当する時でなければ、当該免許の有効期間を更新してはならない。
労働安全衛生法第73条
本条は、クレーン等の免許証には有効期間を設けることができると定めている。クレーン等の免許制度が始まった当時は有効期間が設けらていたが、現在は原則として生涯有効である。したがって、免許証を更新する必要はない。
事業者は、つり上げ荷重が1t以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛けの業務については、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、当該業務に就かせては ならない。
1.玉掛技能講習を修了した者
2.職業能力開発促進法の準則訓練である普通職業訓練のうち、訓練科の欄に掲げる玉掛科の
訓練(通信の方法に よつて行うものを除く。)を修了した者
3.その他厚生労働大臣が定める者
労働安全衛生法施行令第221条
事業者は、つり上げ荷重が1t未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務に労働者を就かせる時は、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を
行なわなければならない。特別の教育は、次の科目について行わなければならない。
1.クレーン、移動式クレーン及びデリツク(以下、この条においてクレーン等という。)に
関する知識
2.クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識
3.クレーン等の玉掛けの方法
4.関係法令
5.クレーン等の玉掛け
6.クレーン等の運転のための合図
特別の教育に関し必要 な事項は、厚生労働大臣が定める。
労働安全衛生法施行令第221条
ワイヤロープ等を使用し、クレーン等のつり具に荷を掛けたり外したりする一連の作業を玉掛けという。昭和53年10月1日、旧クレーン運転免許及び旧デリック運転士免許から玉掛けの資格が分離された。この日以前に交付された免許証には、玉掛けの資格が含まれているため、これらの免許を有する者は玉掛けの業務に就くことができる。
つり上げ荷重 | 玉掛けの特別教育 | 玉掛技能講習 |
1t未満 | ○ | ○ |
1t以上 | × | ○ |
つり荷の質量が0.5t、使用するクレーンのつり上げ荷重が0.9tの場合、特別教育及び玉掛技能講習の修了者は玉掛けの業務に就くことができる。しかし、つり荷の質量が0.5t、使用するクレーンのつり上げ荷重が1tの場合は、特別教育の修了者は玉掛けの業務に就くことができない。つまり、つり荷の質量ではなく、使用するクレーン等のつり上げ荷重によって就くことができる資格が定められている。 |
1つの貨物で、重量が1t以上のものを発送しようとする者は、見やすく、かつ、容易に消 滅しない方法で、当該貨物にその重量を表示しなければならない。ただし、包装されていない貨物で、その重量が一見して明らかであるものを発送しようとする時は、この限りでない。
労働安全衛生法第35条