クレーンの用語
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三相誘導電動機
 三相誘導電動機は、クレーン、デリック、一般産業機械に広く使用されています。 三相誘導電動機の固定子側(ステータ側)を一次側、回転する回転子側(ロータ側)を二次側といい、かご形と巻線形の電動機があり、一次側はどちらも巻線です。
かご形三相誘導電動機
かご形三相誘導電動機の一次側の固定子に電流を流すと、回転する磁界 (磁力のおよぶ場)が発生し、かご形に配置された二次側の太い導線(バー)に誘導電流が流れて回転子が回転します。かご形三相誘導電動機は、一次側の電圧や周波数を変化させて速度を制御することができるため、一次側に抵抗器やリアクトルを入れて速度を制御する方法が用いられています。また、安定した低速を得るために一次側に極数の異なる巻線を2〜3組設け、これを切替えて任意の速度を得る極数変換法を用いているものがあります。これらの制御方式は、巻線形三相誘導電動機に比べると速度性能が劣るため、ホイストや電動機容量の小さい15kW以下のクレーンに使用されています。
 半導体技術の進歩により、近年はインバーダー制御が多く用いられるようになりました。この方式は、起動トルクの制限やインチング運転等の制御性能に優れ、電動機容量の大きいクレーンにも使用することができるため、今ではかご形三相誘導電動機の制御方式の主流となっています。デリックは、電動機を一定方法に回転させ、機械的なクラッチの入・切及びブレーキによって操作するものが多く、クレーンのように正転・逆転・停止・速度制御等を頻繁に繰り返えして使用することがないため、デリックには経済的なかご形三相誘導電動機が多く使用されています。
かご形三相誘導電動機の回転子は、回転子鉄心の周りに太い銅線(バー)がかご形に配置された極めて簡単な構造です。
巻線形三相誘導電動機
 巻線形三相誘導電動機の二次側の回転子は一次側と同じ巻線です。回転子のそれぞれのコイルは、スリップリングを介して外部抵抗(二次抵抗)に接続されています。電流は二次抵抗を通り、ブラシ(回転するスリップリングに接触して電流を流す部品)を介してスリップリングに流れて回転子に導かれます。巻線形三相誘導電動機の速度制御は、回転子に流れる電流の大きさを抵抗器によって変え、回転磁界と回転子に発生する誘導電流の相互作用を変化させて制御しています。これを二次抵抗制御といいます。 
 二次抵抗制御は抵抗による損失によって効率は良くありませんが、起動時に二次抵抗を順次短絡することで円滑な起動を行うことができます。また、負荷が掛かっている時には二次抵抗の加減によってある程度の速度制御が可能なため、起動、停止、正転、逆転、速度制御を頻繁に繰り返すクレーンや大きな始動トルクが必要な場合に使用されています。巻線形誘導電動機の精度の高い速度制御の方法には、二次抵抗制御と共に電動油圧押上機ブレーキ制御、渦電流ブレーキ制御、ダイナミックブレーキ制御、サイリスタ一次電圧制御等が併用されています。これらの制御方法は、高度な制御が要求されるクレーンや大型のデリック等に用いられています。
同期速度
 三相誘導電動機の一次側に交流電流を流すと回転する磁界が発生します。 これを回転磁界といい、この回転磁界に引きずられて回転子が回転します。 この回転磁界
が回転する速度を同期速度といい、 同期速度及び極数は次の式で求めることができます。電動機の1分間の回転数を表わす単位にはrpm、1秒間の回転数にはrpsが用
いられますが、1秒間に1回転する電動機は1分間に60回転するため、1rpsと60rpm
は同じ回転数です。
同期速度 120×電源の周波数
電動機の極数
rpm …… 1分間当たりの回転数
rps …… 1秒間当たりの回転数
…… ポールともいう
電動機の極数 120×電源の周波数
同期速度
 同期速度は電源周波数に比例し、極数に反比例します。 したがって、電源周波数が一定の場合、電動機の極数が多いほど同期速度は遅くなります。60Hzの周波数で運転している三相誘導電動機を50Hzで運転した場合、同期速度は電源周波数に比例するため、この時の回転数は60Hzの電源周波数で運転した時の5/6倍になります。
電動機を50Hzで運転した時の同期速度 50
60
【計算例】
電源周波数60Hz、同期速度が900rpmの三相誘導電動機の極数と、電動機を50Hzで運転した時の同期速度の求め方。
極数 120×60 7200 8極
900 900
電動機を電源周波数50Hzで運転した時の同期速度は
同期速度 120×50 6000 750rpm
三相誘導電動機の滑り
 三相誘導電動機の回転子が同期速度と同じ回転数で回転すると、 回転子に磁界の時間的変化が生じず、誘導起電力は発生しません。このため、回転子は同期速度よりも若干遅くれて回転します。三相誘導電動機の回転子は、同期速度よりも2〜5%ほど遅く回転する性質があるため、非同期電動機と呼ばれています。
 同期速度が1000回転/分の三相誘導電動機の回転子は、 実際には950〜980回転/分で回転しています。この同期速度より遅くなる割合を滑り(スリップ)といい、次の式で求めることができます。滑りは、無負荷の時は非常に小さくてゼロに近く、負荷が掛かるほど滑りは大きくなります。ただし、定格負荷でもごく僅かの滑りで、負荷を掛けても速度がそれほど変わらないことが三相誘導電動機の大きな魅力といえます。 始動前
の回転速度ゼロの状態の滑りは100%で、通常「滑り1」として表されています。
滑り 同期速度−回転子の回転速度120×50
同期速度
回転子の回転速度=同期速度×(1−滑り)
【計算例】
同期速度1500rpm、回転子の回転速度1425rpmの滑りの求め方。
滑り 1500−1425 75 0.05
1500 1500
同期速度1500rpm、滑りが0.05の回転子の回転速度の求め方。
回転子の回転速度 1500×(1−0.05)
1500×0.95
1425rpm
かご形三相誘導電動機の制御
 クレーンの巻上装置に使用されているかご形三相誘導電動機の始動には、通常、全電圧始動が用いられ、横行や走行には緩始動が用いられています。
全電圧始動
 荷が降下する力が強く働く巻上装置には、通常時の運転よりも大きな力が必要です。このため、かご形誘導電動機の巻上装置の始動には、通常全電圧始動が用いられています。 全電圧始動は、始動時に電源電圧をそのまま電動機に加える方法で、ラインスタート又は直入れ法と呼ばれています。 大容量の電動機に全電圧始動を用いると始動の衝撃が大きいため、小容量の誘導電動機に採用されています。
次のような時は、全電圧始動が困難な場合があります。
1 始動電流に対して、電源容量が小さい時
2 始動時の電動機の回転が早すぎる時
3 負荷の慣性が大きい時
始動時間が短いと、急激な発熱による温度上昇や熱による損傷が起こりやすい。
緩始動
 横行又は走行の始動に急激な力が働くと、衝撃が大きくなって荷揺れが起きます。 このため、横行や走行には電気的な始動法や機械的な始動法によってクレ
ーンを緩やかに始動させています。電気的な始動方法には、かご形三相誘導電
動機の回路に 抵抗器、サイリスタ、リアクトル等を挿入して始動電流を抑える方
法等が用いられています。 機械的な緩始動には、流体継手や粉体継手等の動
力伝達機構を用いて始動時の衝撃を吸収する方法が使用されています。
緩始動の種類
1 電気的に電動機自体の始動回転力を制御する方法
2 機械的な動力伝達機構によって始動の衝撃を緩和する方法
1. 一次抵抗による始動
 電動機の一次側に抵抗器を入れて始動電流を抑えて回転を下げる始動方法は、トルク特性によって速度が大きく変化しないため、ある程度しか速度を制御することができません。また、大きな抵抗器を必要とし、熱損失も大きいため、一次抵抗制御は7.5kW以下の誘導電動機に用いられています。
 なお、三相のうち一相だけ抵抗又はリアクトルを装入して始動する方式をクザ始動と呼びます。この方式は、一相の始動トルクは著しく減少しますが、他の相の電流は全電圧時と変わらないため、15kW以下の誘導電動機の緩始動に用いられています。
2. サイリスタ始動
 サイリスタによる始動は、アノードからカソードに電流を流す時間をゲートでコントロールすることができる半導体を使用したもので、電源各相にサイリスタを逆並列につなぎ、電動機の回転数を検知して指定された速度にすることで、無段階の安定した速度を得ることができます。
3. リアクトル始動
 電動機と電源の間にリアクトル(コイル)を接続し、このリアクトルのインピーダンス(抵抗)によって始動電流を抑え、始動後に接続を切り替える方式をリアクトル始動といいます。比較的広範囲の始動特性を得ることができますが、設備費用は高くなります。
4. スターデルタ始動
 始動時に一次巻線をスター結線で接続し、始動後にデルタ結線に切替える始動法で、大きな始動トルクを求めない低圧の電動機に広く用いられています。一次巻線をスター結線にした時に加える始動電流は、デルタ結線の1/3になるため、始動電流を抑えて回転力を落とすことができます。 巻線各相のすべての端子を外部に出し、 スターデルタ始動器によってスター結線又はデルタ結線に切替えられるようにしています。
5. 流体継手(フルードカップリング)
 流体継手は油を媒介として動力を伝達するもので、スムーズな加速を得ることができます。電動機がピークトルクに達する頃に流体継手の被動機側が回転を始めるため、始動時に電動機を低トルクで使用しなくてすみます。また、運転中に衝撃や振動があっても流体継手で吸収するため、機械の破損を防ぐことができます。

 流体継手は、電動機側と被動機側を1対の放射状羽根車で直結したものです。原動機側の羽根車(インペラ)を回転させると、電動機の動力が油によって運動エネルギーに変換されて被動機側の羽根車(ランナ)に送り込まれます。送り込まれた
運動エネルギーは、羽根車によって再び機械的エネルギー
に変わって動力を伝達します。
6. 粉体継手(パウダーカップリング)
 粉体継手は、パウダー(鉄の粒子)を媒介にして動力を伝達するもので、衝撃が少なく緩始動を容易に行うことができます。
 粉体継手は、 電動機に結合された駆動部と負荷側に結合された被動部で構成されています。波状の外縁を有するロータはハブにネジ止めさています。電動機の起動と同時にケーシングは回転しますが、この時点ではロータは回転しません。電動機の速度が増すと、遠心力によってパウダーがケーシングとロータの間に詰め込まれ、くさびの作用によって回転し、動力が被動側のハブに伝達されます。
インバーター制御
 誘導電動機の回転数は、電動機に供給される電源周波数に比例します。インバーター制御は、電動機に供給する電源周波数を変えて速度を制御するもので、可変速制御と呼ばれています。コンバーター(順変換装置)で交流を一旦直流に変換しインバーター(逆変換装置)によって希望する周波数の疑似三相交流に再び変換して速度を制御しています。 これまで直流から交流への変換は容易ではなかったのですが、インバーターの登場によって直流への変換が簡単になり、電源周波数を自由に変換することが可能になりました。
 起動トルクの制限やインチング運転の制御性能に優れたインバーター制御は、容量の大きい誘導電動機にも使用することができ、既設の誘導電動機に後からでも簡単に付加することもできます。技術の進歩と量産化によってインバーターの制御器が安価になったため、今ではかご形三相誘導電動機の制御方式の主流になっています。 インバーターによる速度制御の範囲は広く、5〜100%の安定した速度を得ることができます。
極数変換(ポールチェンジ)と二電動機式
 誘導電動機は、極数を変えることで回転数を変えることができます。電動機の極数を変換する方法には、図のように1つの巻線の接続を切替えて異なる極数を得る方法や電動機に極数の異なる2巻線又は3巻線を設け、この接続を切替えて2速度又は3速度を得る方法があります。この方式を用いた電動機を極数変換電動機といいますが、極数が多くなるほど切換機構が複雑になると共に電動機が大型になり、価格も高くなるため、通常は速度比2:1の2巻線のものが多く使用されています。
 2速度の比が10:1のように大きい場合は、極数変換電動機によって低速を得る方法では不経済なため、このような場合には二電動機式が用いられています。二電動機式は、2台の電動機を機械的に切替えて低速を得る方法で、 特に繊細な制御や位置決めが必要なクレーンに使用されています。極数変換や二電動機式は、巻線形三相誘導電動機にも用いられることがあります。
高速(4極接続) 低速(8極接続)
巻線形三相誘導電動機の制御
 全電圧始動による始動は、短い時間であっても定格電流の5〜7倍の大きな電流が流れます。この電流を減らすために各種の緩始動を行うと電流と共にトルクが減少し、定格トルクよりも小さい始動トルクになります。負荷が大きい時や始動頻度の激しい時は、電動機内部の発熱が大きいため、電動機の焼損や寿命を縮める恐れがあります。
このような場合には、巻線形三相誘導電動機が用いられています。 巻線形三相誘導電動機は、かご形三相誘導電動機と同じ極数変換や二電動機式も用いられていますが、巻線形のみに用いられる制御方式には次のようなものがあります。
二次抵抗制御
 二次抵抗制御は、回転子側の巻線に外部抵抗(二次抵抗)を接続し、この抵抗の値を変化させて速度を制御するもので、横行・走行・旋回に広く用いられています。
二次抵抗の加減によって回転子に流れる電流の大きさを変える二次抵抗制御はある程度の速度制御はできますが、つり荷を巻下げる時のように電動機が負荷によって回される場合は、荷重によって速度が大きく変化するため、安定した速度を得ることができません。このため、巻下げ等の速度制御には二次抵抗制御に様々な速度制御装置を組合せて速度を制御しています。速度制御装置は、一般にブレーキと呼ばれていますが、物体の運動を停止させたり保持したりする機能はないため、制動用ブレーキはこれとは別に設けられています。
電動油圧押上機ブレーキ制御
 二次抵抗制御を巻上げや起伏に使用する場合は、負トルクによって安定した低速を得ることができません。このため、安定した低速を得るために二次抵抗制御に電動油圧押上機ブレーキを併用した電動油圧押上機ブレーキ制御が用いられています。電動油圧押上機ブレーキ制御は機械的な電動油圧押上機ブレーキの制動力によって低速を得る方法で、低速の限度は全速の30%程度です。
 磨耗するブレーキシューを用いているため、使用頻度の高いものや大型の電動機には不向きで、90kW程度以下の小容量の電動機の速度制御に用いられています。
 電動油圧押上機ブレーキ制御は、 巻線形三相誘導電動機の二次側にマッチングトランスを設け、 電動機の軸にブレーキドラムと電動油圧押上機を取付けています。
 マッチングトランスによって電動機の回転数に応じた電力を電動油圧押上機に供給し、電動機の回転が速くなるほどブレーキの摩擦力を大きく、電動機の回転が遅くなるほど小さくなるように押上力(ブレーキシューとブレーキドラムの摩擦力)を変化させて電動機を制御しています。マッチングトランスは、一次側のコイルと二次側のコイルの間の相互誘導を利用して電力を伝えるもので、 2つのコイルの巻線比によって電圧やインピーダンス(回路に交流電流を流す際に生じる抵抗)を変えるものです。
渦電流ブレーキ制御
 磁極面に置かれた金属製円板が回転すると、その回転を止めようとする方向に電流が渦状に流れます。 渦電流ブレーキ制御は、渦電流による制動力を利用したもので、電動機に連結して用いられています。

 渦電流ブレーキ制御は、軽負荷では電動機に回転を与えて強制的に荷を巻下げ、重負荷では自重で降下する荷を渦電流ブレーキで制御して一定の低速を得ることができます。電動押上機ブレーキのような消耗する部分がなく、制御能力に優れていますが、 価格は少し高くなります。 構造上、装置が大きくなる傾向があるため、大容量電動機には不向きです。
ダイナミックブレーキ制御
 巻線形三相誘導電動機の一次側の交流電源を切り離し、その一次側に直流発電機で発電した直流を流すと、巻線形三相誘導電動機の回転磁界が固定磁界に変わります。この固定磁界の中で回転子が回転すると、回転子巻線に回転方向とは逆方向の誘導起電力が生じます。この力を制動力に利用したものをダイナミックブレーキ制御といいます。
 ダイナミックブレーキ制御は全速の10%〜70%程度の低速を得ることができますが、制動力が大きいために、負荷が軽い場合は低速で巻下げを行うことができません。このため、電動機容量110kW以上の大型の電動機や、質量の大きな作業を行うレードルクレーン等に用いられています。
サイリスタ一次電圧制御
 サイリスタ一次電圧制御は、電動機の一次側に加わる電圧が変わると回転数が変わる性質を利用したもので、 サイリスタ装置によって一次側に加える電圧を制御しています。

 サイリスタ一次電圧制御は、電動機の回転数を検知して指定された速度と比較しながら制御するため、低速では全速の5%程度の安定した速度を得ることができます。ただし、設備費用は高くなります。