動力を伝達して所定の速度を得るため、クレーンには歯車や減速装置等が多く使用されています。
歯車の主な種類には、平歯車、はすば歯車、かさ歯車、ウォームギヤ等がある。
平歯車は、軸に対して歯が平行に切られている。歯車1個では役目を果たさないため他の歯車と組み合わされて平行な軸間の動力の伝達に用いられる。2つの歯車が噛み合っている時、小さい方の歯車は小歯車(ピニオン)、大きい方の歯車は大歯車
(ギヤ)といい、回転する方向は互いに反対になる。
はすば歯車は、歯が軸につる巻き状に斜めに切られ、右あるいは左にねじれている。動力伝達のむらが少なく静かに回転するため、平歯車と比べ減速比を少し大きくすることができる。はすば歯車や平歯車は、クレーンの減速機に多く使用されている。
かさ歯車は、歯すじの延長線が軸の交点方向に向くように配置された円錐形の歯車で、互いに交わる2本の軸間の動力を伝達するために用いられている。かさ歯車には、軸角が90度で歯すじの延長線が軸の交点と交わる「すぐばかさ歯車」、軸角が90度で歯すじの延長線が軸の交点と交わらない「はすばかさ歯車」 、歯すじの曲がった「まがりばかさ歯車」等があり、橋形クレーンの走行装置等に使用されている。
軸にネジを切ったような歯車をウォームという。この歯車が細長い虫に似ていることから、ウォームという名が付けられた。 ウォームに直角に噛み合う歯車をウォームホイールといい、これらを組み合せたものをウォームギヤという。ウォームギヤは、平歯車、はすば歯車、かさ歯車に比べて効率は低いが、比較的小型の装置で15〜50の大きな減速比が得られるため、ジブクレーンの起伏装置や旋回装置に使用されている。
図のように一対になっている歯車を歯車対といい、駆動する歯車を駆動歯車、回転させられる歯車を被動歯車という。また、歯車の回転が変化する割合を減速比という。駆動歯車の歯数をZ1、被動歯車の歯数をZ2とし、駆動歯車の回転数をN1、被動歯車の回転数をN2とすると、減速比は次の式で求めることができる。歯車の減速比は、むやみに大きくできない。このため、大きな減速比を必要とする場合には、複数の歯車を1つの箱に収めた減速機箱(ギャボックス)が使用される。
<例題>
駆動歯車の歯数が20、被動歯車の歯数が80の場合に駆動歯車が1分間に1,000回転する時の被動歯車の毎分の回転数の求め方。
図のような3つ以上の平歯車を組み合せたものを歯車列といい、 最初に駆動する駆動歯車と最後の被動歯車の回転の比を速度伝達比という。歯車列の回転方向は、中間歯車の数が奇数個であれば駆動歯車と同じ方向、偶数個であれば逆の方向に回転する。 駆動歯車の歯数をZ1、中間の被動歯車の歯数をZ2、最後の被動歯車の歯数をZ3とすると、速度伝達比は次の式で求めることができる。速度伝達比の計算には中間歯車は関係しないため、 中間歯車の数を幾ら増やしても駆動歯車と最後の被動歯車の歯数によって速度伝達比を求めることができる。 なお、1分間当たり回転数(回転/分)の単位にはrpmが用いられている。
<例題>
歯車列の駆動歯車Z1が1分間に1000回転する時の被動歯車Z3の毎分の回転数の求め方。ただし、Z1の歯数を30、Z2の歯数を60、Z3歯数を150とする。
歯車列の速度伝達比は、駆動歯車と最後の被動歯車の歯数によって求めることができる。 中間歯車Z2については、考える必要はない。 続いて、この速度伝達比によって駆動歯車が毎分1000回転している時の最後の被動歯車Z3の回転数を求める。
図の歯車は、軸1に駆動歯車Z1、軸2に大歯車Z2と小歯車Z3が取付けられ、軸3にはZ3と噛み合う被動歯車Z4が取付けられています。 このように2回減速する歯車列を2段減速といい、速度伝達比は次の式で求めることができる。
<例題>
2段減速の駆動歯車Z1が毎分1200回転する時の被動歯車Z4の回転数の求め方。ただし、Z1の歯数を25、Z2の歯数を50、Z3歯数を40、Z4の歯数を80とする。