クレーンの用語
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ドラムブレーキ(ホイールブレーキ)
 ドラムブレーキは、ブレーキライニング(ブレーキシューともいう)をバネの力によってブレーキドラムの外側に押し付けて制動するもので、電磁石を用いてブレーキを開放する方式と電動油圧押上機の押上力によってブレーキを開放する方式があります。 これらのブレーキは、ジブ又はブームの起伏、横行、走行、旋回、引込み等に広く用いられています。
ドラム形電磁ブレーキ
 ドラム形電磁ブレーキは、電磁石、リンク機構、バネで構成されたもので、電動機に電流が流れると電磁石に通電し、電磁石がバネの力に逆らって制動を開放
します。電動機の回転を止めると電磁石への通電が止まり、バネによって再びブレーキシューがドラムを締め付けます。
 ドラム形電磁ブレーキには、励磁(電流を流して磁石にすること)を交流で行う交流電磁ブレーキと、直流で行う直流電磁ブレーキがあります。
電動油圧押上機ブレーキ
 電動油圧押上機ブレーキは、電磁石の代わりに電動油圧押上機を用いたもので、電動ポンプから発生する油圧の押上力によってブレーキの制動を開放しています。電磁ブレーキに比べて制動に要する時間が長い反面、音は静かで制動時の衝撃が少ないため、横行及び走行の停止に広く使用されています。
 電動油圧押上機ブレーキを巻上げやジブ又はブームの起伏用に使用する場合は、巻線型誘導電動機と組合せて速度制御用に使用しています。
バンドブレーキ
 バンドブレーキは、摩擦に強い軟鋼製の帯(バンド)の内面にライニングをリベットで取付けてブレーキドラムに巻き付け、この帯を締め付けて制動するもので、足踏式バンド
ブレーキと電磁バンドブレーキがあります。 帯状のバンドは均等に緩みにくいため、等しく緩むようにバンドの外周に隙間調整ボルトが設けられています。
軽荷重用のキー
 足踏式バンドブレーキは、足の力で締め付けて制動するもので、運転室から操作する天井クレーンの走行用ブレーキに広く使用されています。足踏式や手動式は、ブレーキ操作に必要な力量とストロークの値が次のように定められています。
ブレーキ操作に必要な力とストローク
操作方式 操作力(力量) ストローク
足踏式 300N以下 30cm以下
手動式 200N以下 60cm以下
電磁バンドブレーキ
 電磁バンドブレーキは、 おもりの力で締付けられているブレーキバンドを電磁石によって開放するもので、 バケット付きクレーンの単電動機式巻上装置等に使用されています。
ディスクブレーキ
 ディスクブレーキは、ディスク(円板)の両側をブレーキパッド (摩擦の大きい材質)で挟みつけて制動するもので、装置を比較的コンパクトにすることができ、冷却効果に優れています。
足踏油圧式ディスクブレーキ
 電動機の軸端にディスクを取付け、足踏油圧シリンダを操作して生じる油圧で、ブレーキシューをディスクに押し付けて制動します。
 運転室から操作する天井クレーンの走行用、ジブクレーンの旋回用として使用されて
います。
電磁ディスクブレーキ
 電磁ディスクブレーキは、スプリング力によってパッドをブレーキディスクに押し付けて電動機の回転を制動しています。 電動機に通電すると、電磁コイルに電流が流れ、電磁石がスプリングの力に逆らってブレーキを開放するものです。
 電動機を停止させると、 再びスプリング力によってパッドがディスクを押し付けて制動します。電磁ディスクブレーキには、電動機の軸端に取付けたブレーキ付電動機や、電動機と一体になったものがあり、 ホイストの巻上装置等に使用されています。
電動油圧式ディスクブレーキ
     電動機の軸端にディスクを装備し、スプリング力でパッドをブレーキディスクに押し付けて制動するもので、 ブレーキの開放は電動油圧によって行っています。小型で安定した制動トルクが得られるため、クレーンの巻上げ走行、旋回等に使用されています。
メカニカルブレーキ(機械ブレーキ)
 メカニカルブレーキは、巻上装置の巻下げ時の荷重によるつり荷の降下速度の加速を防止するために用いられていましたが、構造が複雑で保守が難しいため、近年はほとんど使用されません。メカニカルブレーキにはウェストン式やべッカー式がありますがこれらのブレーキは停止や保持に用いる制動用ブレーキではないため、メカニカルブレーキ単独での使用は認められていません。
ウェストン式メカニカルブレーキ
 ねじを切っている軸に回転によって自動的に働くディスクブレーキが取付けられています。荷重側のドラムの降下速度が電動機の回転よりも速くなると、ねじを切っている軸の回転によって自動的に摩擦板が締め付けられてブレーキが掛かり、降下速度の加速を防止します。
べッカー式メカニカルブレーキ
 ウォームの付いた軸にコーンクラッチを取付け、逆転防止用のラチェット(歯車と爪によって回転方向を一方に制限する機構)を設けたもので、巻上げでは電動機の動力がウォームの軸を回転させ、コーンクラッチがつながって回転します。巻上げを停止させると、荷重の力によって逆転しようとする軸にラチェットが働いて回転を停止させます。巻下げでは、電動機の逆回転によってウォームを回し、つり荷をじわじわと下ろすことができます。
ウェストン式メカニカルブレーキ べッカー式メカニカルブレーキ
渦電流ブレーキ(VSブレーキ)

 渦電流ブレーキには、つり荷の荷重が変わっても一定の速度を得ることがでる自動制御や、荷重によって巻下速度が変わる非自動制御があります。渦電流ブレーキは、磨耗する機械的部分がない制御方式で、巻上げ、起伏(引込み)、横行、走行等に使用されていますが、装置の構造が大きくなるため大容量電動機には向きません。
ブレーキの点検
 ブレーキの点検は、点検するブレーキの取扱説明書をよく読み、次の点について十分に留意して作業しなければなりません。
1. 電磁ブレーキの電磁石のストロークが大きい場合は、ブレーキを開放する作動が遅くなる症状が現れるため、規定値に調整しなければならりません。また、電磁石に吸引された時の鉄心の面が正常に密着しないと過電流が流れて焼損を起こす恐れがあるため、密着の状態を点検して調整をする必要があります。交流式のものは、これ以外に唸りを発生させ、ブレーキ各部に緩みを生じさせるため、直ちに修理しなければなりません。
2. ブレーキライニングに水や油が付着すると制動力が著しく低下するため、ライニングは清潔で乾燥した状態に保たなければなりません。また、ライニングが磨耗しているとブレーキの調整ができず、ブレーキドラムを傷める恐れがあるため、 磨耗の度合いが一定以上に進んでいる場合は直ちにブレーキライニングを交換しなければなりません。
3. ブレーキが円滑に作動するように各ピン周りに給油し、ピンの摺動部の錆付きや焼付きがある場合は分解して整備しなければなりません。
4. 足踏式ディスクブレーキや電動油圧押上機のブレーキは、 配管その他に油漏れや空気の混入があると制動力が生じない恐れがあるため、油漏れ・油量・油の汚れ等に注意する必要があります。
5. バンドブレーキの帯は、ブレーキドラムに均等に当るように調整ボルトで適正な隙間に調整しなければなりません。
6. ブレーキの制動力を高め過ぎると、制動によって大きな力が作用し、電動機又はブレーキの損傷やつり荷を落下させる恐れがあるため、制動トルクはメーカーが定める規定値に設定しなければなりません。
7. ブレーキの使用条件又は負荷が過酷な場合やブレーキの調整が適正でない場合は、ブレーキドラムとブレーキライニングの温度が異常に高くなり、ライニングの焼付き、変形、変質、ブレーキドラムの亀裂等を発生させるため、 定期的に点検を行う必要があります。