クレーンの作動装置

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 大容量のクレーンは、作業能率を高めるために大容量の巻上装置の他に、主巻きよりも巻上速度が速い小容量の巻上装置を設けているものが多い。クレーンに容量の異なる2つの巻上装置が設けられている時、定格荷重が大きい側を主巻きといい、定格荷重が小さい側を補巻きといいます。

巻上装置

 巻上装置は、ワイヤロープ等を用いてつり荷を巻上げたり巻下げたりする装置で、電動機によってドラムを回転させて巻上用ワイヤロープを巻取って巻上げを行っている。巻上装置は、巻上用電動機、ドラム、減速装置、制動用ブレーキ等で構成され、つり荷の停止や保持には制動用ブレーキが用いられている。つり荷を巻下げる時には、荷重によって電動機が回されようとするため、この加速を防止して低速で巻下げを行うために電動機の軸に速度制御用ブレーキを取付けているものがある。安全装置としては、つり具が巻上げの上限に達した時に自動的に電動機の電源を切り、ブレーキを作動させて巻上げを停止させる巻過防止装置(リミットスイッチ)が設けられている。

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ホイスト

 ホイストは、電動機・減速装置・ドラム等を1つのケーシングにまとめて収めた巻上装置で通常、電動横行式がクレーンのトロリに用いられている。ホイストには、ワイヤロープで荷をつるワイヤホイストとつりチェーンで荷をつるチェーンホイストがある。
 ワイヤホイストには、1本の主けたのII 形鋼レールを横行するサスペンション式普通型ホイストと、フックの上り寸法(図のH寸法)を短くするためにホイストをレールと直角に配置したサスペンション式ローヘッド型ホイストがある。2本の主けたを横行するホイストには、クレーンガーダに取付けた4つの横行車輪のうちの2つが駆動するトップランニング式ダブルレール型ホイストが使用されている。

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サスペンション式
普通型ホイスト
サスペンション式
ローヘッド型ホイスト
トップランニング式
ダブルレール型ホイスト

横行装置

 横行装置は、トロリを横行させる装置で、電動機の回転を減速装置の歯車で減速して横行車輪を駆動させてトロリを横行させる。横行装置には、電磁ブレーキや電動油圧押上機ブレーキが用いられているが、横行車輪軸受が滑り軸受で屋内に設置されるもの、床上で運転する方式のクレーン(床上の定位置から運転する方式のクレーンを除く)のうち、 横行車輪軸受が転がり軸受で、かつ、トロリの横行の定格速度が毎分20m以下で屋内に設置されるもの、油圧でトロリが横行するもの、人力でトロリが横行するものは、ブレーキの取付けが義務付けられていないため、これらのクレーンにはブレーキ
を設けていないものがある。

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走行装置

 走行装置は、クレーン全体を走行させる装置で、駆動の方法には1台の電動機による1電動機式、2台の電動機による2電動機式、4台の電動機による4電動機式がある。天井クレーンには、一般に2電動機式が多く使用されているが、小型のクレーンには1電動機式、大型のクレーンには4電動機式を用いているものがある。橋形クレーンの走行装置には、ガーダの中央に設けた1台の電動機によって両側の車輪を駆動させる1電動機式と、それぞれの脚下部に電動機と減速装置を設けた2電動機式がある。走行装置には、電磁ブレーキや電動油圧押上機ブレーキ等が使用されているが、運転室で操作するクレーンには足踏式油圧ブレーキを使用しているものがある。なお、床上で運転し、かつ、運転する者がクレーンの走行と共に移動する方式の屋内に設置されるクレーンのうち、走行車輪軸受が滑り軸受であるもの、走行車輪軸受が転がり軸受で走行の定格速度が毎分20m以下であるもの、油圧で走行するもの、人力で走行するものは、ブレーキを設けていないものがある。

 ● 1電動機式

 1電動機式は、ガーダの中央付近に取付けた走行装置の電動機が減速装置を介して走行長軸の両側に取付けている小歯車(ピニオン)を回転させ、走行車輪の歯車(ギヤ)を駆動させている また、電動機の回転よりも走行速度を低速にするため、減速装置の歯車によって回転を落としている。

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 ● 2電動機式

 2電動機式は、電動機と減速機を両側のサドルに取付け、ピニオンを回転させて走行車輪に取付けたギヤを駆動させている。 

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起伏装置

 ジブクレーンのジフや橋形クレーンのカンチレバー等の取付部を中心に上下させる装置を起伏装置という。ジブクレーンの起伏装置は、電動機の他にブレーキ、減速装置、ドラムを備えドラムから伸びるワイヤロープを機体側シーブとジブ側シーブに掛けてドラムを回転させて起伏用ワイヤロープの巻取りや巻戻しを行ってジブを起伏させている。ジブの停止や保持は、電動機軸に取付けた電磁ブレーキによって自重や荷重による降下を防止している。起伏装置の電動機は、減速比を大きくして速度を落とすため、ウォームギャ減速装置を用いて減速比を大きくしている。起伏装置には、安全装置として最大及び最小作業半径を超えようとすると、自動的に起伏を停止するリミットスイッチが取付けられている。

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引込装置

 つり荷の引込みや押出しをする装置を引込装置といい、引込みクレーンに取付けられている。引込装置には、ダブルリンク式、スイングレバー式、ロープバランス式、テンションロープ式があり、これらの装置を総称して引込装置という。ダブルリンク式引込みクレーンは、ロッドの出し入れによってジブを起伏している。このロッドの機構には、ネジ式(スクリュー式)、ラック式、クランク式、油圧式がある。

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旋回装置

 ジブクレーン等の旋回体を旋回させる装置を旋回装置という。低床ジブクレーンは、受台にローラパス(円形レール)を設け、その上に旋回体のローラ部を据え、旋回体に設けた電動機の動力を減速装置に伝えて固定歯車に噛み合っているピニオンを回転させ、センターポストを中心に旋回体を旋回させている。起動又は停止時の衝撃の緩和ならびに強い風に逆らって旋回させる場合は、電動機や駆動部に大きな負荷を掛けないようにするため、減速機の部分に滑り機構を持たせたものがある。
 旋回装置のブレーキには、急激な制動を起こさないように踏み込む力を加減できる足踏式の油圧ブレーキが多く使用されているが、停止用ブレーキにハンドブレーキを併用しているものがある。また、作業を行わない時の屋外クレーンの多くは、ブレーキを緩めて風で旋回体が流されるようにしている。固定歯車には、歯を外側に切っているものや内側に切っているものがある。

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