安全装置

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 安全装置は、誤操作や故障による事故の発生を未然に防止するものです。 安全装置には、異常を検知した場合に自動的に作動するもの、操作する者が異常を感じた時に操作するもの、あらかじめ組み込まれているもの等があります。


巻過防止装置

 巻上用ワイヤロープを巻き過ぎると、フックブロックがジブ等に激突し、フックブロック、シーブ、ジブ等の破損、巻上用ワイヤロープの切断、つり荷の落下等を招く恐れがある。巻過防止装置は、つり具が定められた高さになるとリミットスイッチが作動し、自動的に警報を発し又は停止させる装置で、クレーンに設けることが定められている。ブザー等の警報を自動的に発する装置を巻過警報装置、クレーンを自動的に停止させる装置あるいは警報と自動停止を兼ね備えた装置を巻過防止装置という。

 ● 直働式巻過防止装置

 直働式の巻過防止装置は、フックブロックがリミットスイッチを直接作動させて自動的に回路を開いて電動機の回転を停止させるもので、ジブクレーンや電気ホイスト等に使用されている。直働式巻過防止装置には重錘形とレバー形があり、それぞれ電磁接触器の操作回路を開く操作回路式と、電動機の回路を直接開く動力回路式がある。野外で使用されるリミットスイッチには、防水、防塵形が使用されている。重錘形リミットスイッチは、巻上用ワイヤロープを巻き過ぎると、ロープに沿ってつり下げられているおもり(ウエイト)がフックブロックの上面によって押し上げられ、レバーが傾いてリミットスイッチの回路を開き、電動機の回転を止める。レバー形リミットスイッチは、フックブロックの上面がリミットレバーを押し上げ、リミットスイッチの回路を開く。
● 直働式巻過防止装置の特長
  1. 作動位置の誤差が少なく、作動後の復帰距離が短い。
  2. ドラムの回転と連動していないため、ワイヤロープの交換を行っても作動位置の調整を
   する必要がない。
  3. 巻下げ位置の制限ができないため、巻下げの制限を必要とする場合は直働式以外の方法
   を用いなくてはならない。

              
             重錘形リミットスイッチ       レバー形リミットスイッチ 

 ● 間接式巻過防止装置

 間接式の巻過防止装置は、巻上用ドラムの回転を歯車とつながった軸に連動させたネジ軸又はカムを回転させて回路を開閉し、巻上用ドラムの回転を停止させる。軸の回転によって巻上用ワイヤロープの巻取りの長さを測り、間接的にフックの位置を読み取るため、間接式巻過防止装置と呼ばれている。この装置は、複数の接点を設けることができるため、巻上げ過ぎと巻下げ過ぎの両方の位置制限を行うことができる。これらのリミットスイッチは、いずれも電磁接触器の操作回路を開閉する方式である。ネジ形リミットスイッチは、ドラムのギヤと噛み合う歯車がねじ軸を回転させてトラベラーを移動させ、レバーを押して回路を開閉する。このネジ形リミットスイッチのスクリューやトラベラーは、機械的な部品であるため、給油を行う必要がある。カム形リミットスイッチは、巻上用ドラムの回転に連動したカムの回転角によって接点レバーが回路を開閉する。
● 間接式巻過防止装置の特長
  1. 直働式に比べて停止精度が劣る。
  2. 1つの装置で巻上げ及び巻下げの位置の制限ができる。
  3. 巻上用ワイヤロープを交換した時は、作動位置を再調整しなければならない。

              
            ネジ形リミットスイッチ         カム形リミットスイッチ

過負荷防止装置

 下図のクレーンの定格荷重曲線図は、作業半径によって定格荷重が変化していることを示している。つまり、荷の質量によってはクレーンの転倒やジブの破損等を招く恐れがあるということである。この危険を防止するため、ジブクレーン等には過負荷防止装置を設けることが定められている。この定格荷重曲線図は、ジブを継ぎ足してジブ長さを変えることができるクラミングクレーンのものである。30mのジブの場合(一番上の赤線)、作業半径が15mの定格荷重は10tであるが、作業半径が30mでは5tになる。

               

 ● モーメントリミッタ

 過負荷防止装置は、ジブを倒して傾斜角を小さくしていく場合等に、つり荷の質量が定格荷重を超えようとする時に自動的に警報を発し、超える時には自動的に作動を停止させる送致である。荷重検出器(ロードセル)及びジブ傾斜角検出装置から伝達された情報と、過負荷防止装置が記憶している数値を比較演算し、この判定に従って警報や自動停止を行っている。過負荷防止装置の製造メーカーは、厚生労働大臣又は厚生労働大臣が指定する「検定代行機関」が行う過負荷防止装置の検定を受けることが定められている。荷重の検出には、巻上用ワイヤロープの張力の歪(ひずみ)を荷重検出器によって測定する方法等が用いられている。ジブの傾斜角の検出には、振り子で作動する可変抵抗器をジブ側面に取付け、水平面とのなす角度を検出する傾斜角検出装置が使用されている。

        

 ● ロードリミッタ

 つり上げ荷重が3t未満のジブクレーン、傾斜角及び長さが一定のジブクレーン、定格荷重が変わらないジブクレーンは、過負荷防止装置以外の過負荷を防止する装置を備えていれば過負荷防止装置を設けなくてよいと定められている。過負荷防止装置以外の過負荷を防止する装置は、傾斜角の検出は行わず、つり荷の質量のみを検出して自動的に過負荷に対する警報を発したり作動を停止させるもので、ロードリミッタと呼ばれている。ロードリミッタが荷重を検出する方法には、機械式、電気式、ロードセル等が使用され、荷重を示すデジタル表示盤を運転室に設置したり、玉掛作業者等が見える位置に大型の表示盤を設置したりしている。

           
          荷重検出器(ロードセル)          可変抵抗器

傾斜角指示装置

 ジブクレーンは、運転士の見やすい位置にジブの傾斜角の度合いを示す装置を備えなければならないと定められている。ただし、ジブの起伏の上限及び下限において自動的にジブを停止させる安全装置を備え、かつ、ジブの傾斜角度よって定格荷重が変わらないものについては、傾斜角の度合いを示す装置を備える必要はない。ジブクレーンには、傾斜角指示装置が使用されているが、これらは単純な機械的装置でリミットスイッチは使用していない。また、ジブクレーンの傾斜角指示装置には、傾斜角の他に定格荷重を示す指示計を設けているものがある。

      
      写真は、デリックの傾斜角指示装置

緩衝装置及び逸走防止装置

 天井クレーン等は、横行レールや走行レールの両端に車輪止め、ストッパー、緩衝装置等を設けることが定められている。緩衝装置は、ブレーキの作動が遅れた時の最終的端部制限緩衝装置で、横行レールを横行するトロリや走行レールを走行するクレーンがレール端から飛び出さないように防止したり、衝突の衝撃を吸収したりするものである。

 ● 横行レールの緩衝装置

 天井クレーン、つち形クレーン、壁クレーン、橋形クレーン、橋形クレーン式アンローダ等は、横行するトロリがレールの端から走り出ないようにするため、横行レールの両端に緩衝装置(バッファ)、緩衝材、車輪止め等を設けることが構造規格によって定められている。
 クラブトロリ式、トップランニング式ダブルレール型ホイスト、横行速度の遅い天井クレーン等は、一般に車輪止め又はストッパーが使用されている。I 形鋼のガーダを横行するサスペンション式ホイスト等は、I 形鋼の形状に応じた鋼板による車輪止めやストッパーが使用され、緩衝材には硬質ゴムが一般的に使用されている。車輪止めの高さは、横行車輪の直径の1/4以上と定められている。

            
         車輪止め           ストッパー           I 形鋼用

 大型又は高速で衝突時の衝撃が大きいクレーンには、ガーダの両端にバネ式又は油圧式の緩衝装置が設けられている。なお、取付けを義務付けられているものではないが、クレーンの横行による衝突を防止するために横行回路を遮断するVレバー形リミットスイッチ又はローラレ
バー形リミットスイッチを設けているものがある。

           
           バッファ        Vレバー形及びローラレバー形リミットスイッチ

 ● 走行レールの緩衝装置

 走行するクレーンは、クレーン本体が走り出ないようにするため、クレーンの走行方向の側壁又は走行レールの両端部に緩衝装置や車輪止めを設けることが構造規格によって定められている。走行レールの両端には、ゴムによるストッパーや車輪止めが一般に使用されているが、大型又は高速で衝突時の衝撃が大きいものは、ガーダの両端にバネ式又は油圧式の緩衝装置を設けているものがある。車輪止めの高さは、走行車輪の直径の1/2以上と定められている。

          
             車輪止め         ストッパー

逸走防止装置

 レールクランプは、野外で作業中のクレーンが突風により逸走したり転倒したりしないようにするために使用されている。レールクランプには、手動式、電動式、油圧式があり、走行レ
ールのどの位置でも使用できるが、突風程度の力にしか耐えることができない。
 アンカー(レールアンカー又はクレーン固定装置ともいう。)は、走行路の端の基礎部分に設置されている係留金具位置にクレーンを移動させて係留するもので、暴風時の風によるクレ
ーンの逸走を防止するために使用されている。一般には手動式のアンカーが使用されているが大型クレーンの場合は電動式又は油圧式のアンカーを使用しているものがある。また、アンカ
ーの使用中はクレーンが走行できないようにインターロックできるものもある。なお、作業を終えたクレーンは、アンカーを作用させておくことが肝心である。

         
                   レールクランプ
                        
                             アンカー

衝突防止装置

 衝突防止装置は、互いのクレーンが接近した時に双方のクレーンを停止させるリミットスイ
ッチ式の装置である。 この装置を両方のクレーンに備え、クレーンから突き出た棒状の腕で各リミットスイッチを作動させて停止させるものである。しかし、上下のランウェイにクレーンを設置している場合には、この衝突防止装置は役に立たない。このような場合には、光、超音波、レーザー 等の衝突防止装置を使用し、クレーンの接近を受光器や受信機で感知して警報を鳴らしたり、双方のクレーンを停止させたりする装置が使用されている。

           

警報装置

  走行クレーン(床上で運転し、かつ、運転する者がクレーンの走行と共に移動するクレーン及び人力で走行するクレーンは除く。)には、ブザー、ベル、サイレン、電子ホーン、音声付回転灯等の注意を促す警報装置を備えることが定められている。警報装置には、押しボタンスイッチを運転室内に設け、運転者が必要に応じて警報を発するものや、巻上げ、巻下げ、横行走行等の特定の動作に時間的間隔を区切って自動的に警報音や識別回転灯を点灯させるもの等がある。また、ランウェイに数台のクレーンを設置している場合は、クレーンを混同しないように警報音を替えているものがある。

停止位置表示装置

 停止位置表示装置は、クレーンを使用しない時に定められた位置に停止させて作業の安全を確保するもので、ガーダやトロリに目印を付け、両方の合マークが一致するように停止させるために設けられている。

            

速度開閉器

 巻上装置の速度制御装置が故障して巻下速度が定められた速度より早くなると、つり荷が自由降下状態の危険な状況になる恐れがある。このような場合に電動機の回路を自動的に開き、非常ブレーキを掛ける装置を速度開閉器という。速度開閉器は、永久磁石の回転によって発生する誘導トルクで機械的にスイッチを開閉するもので、電源が不要で保守が容易である。この装置は、引込み装置や起伏装置にも使用されている。

        

ゼロノッチインターロック(オフインターロック)

 不意の停電でクレーンが停止した場合、電力が復旧した時にコントローラが停止位置以外にあるとクレーンが急に動きだす恐れがある。ゼロノッチインターロックとは、このような危険を防止するため、コントローラをゼロノッチに戻さなければ主電磁接触器を投入できないようにインターロック(誤った操作や機械の誤動作で起こる事故を防止する結線による仕組み)したものをいう。

フートスイッチ(安全床スイッチ)

 フートスイッチは、天井クレーン等の運転室からガーダへ登る階段に取付け、点検等で階段を上がる際に主回路を開いて感電による災害を防止するために設けられている。

          
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