原動機

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 自然界に存在するさまざまなエネルギーを機械的な仕事(力学的エネルギー)に変換する装置を原動機といいます。





原動機

 電気、燃焼、蒸気の熱等のエネルギーを機械力に変える装置を原動機という。クレーンやデリックには、電気エネルギーを機械力に変える電動機(モーター)が使用されている。

 ● 内燃機関

 内燃機関は、軽油やガソリン等の燃焼エネルギーを機械力に変えるもので、軽油を燃料とするディーゼルエンジンとガソリンを燃料とするガソリンエンジンがある。ガソリンエンジンは混合気をスパークプラグの電気花火によって着火させている。ディーゼルエンジンは、空気を圧縮して高温になったところに燃料を噴射して自然発火させている。ディーゼルエンジンは、効率が良く、燃料経費も安いため、機動性が要求される移動式クレーンの原動機として広く使用されている。

 ● 油圧装置

 油圧装置は、ディーゼルエンジン等で駆動させた油圧発生装置により、油タンクの作動油を油圧ポンプで吸い込んで加圧し、油圧シリンダや油圧モータ等の駆動装置を駆動させている。内燃機関は、一次原動機と呼ばれる。油圧装置は、その内燃機関から機械力を受け、これを一旦、油圧に変換し、更に油圧を機械力に変えることから二次原動機と呼ばれている。

 ● 蒸気機関

 蒸気機関を原動機に用いた代表的なものには、蒸気機関車がある。 蒸気機関はボイラで水を蒸発させて作った高圧の蒸気エネルギーを機械的力に変える装置で、機動力が大きく速度制御を自由に行うことができる。蒸気機関を原動機に用いた代表的なものには蒸気機関車がある。今ではSLと呼ばれ、大変な人気がある。蒸気機関車の大きな円筒形した部分を煙管ボイラといい、水を蒸発させて高圧の蒸気を作り出している。蒸気は、密閉した空間に押し込むと圧力が高まる。下図は蒸気機関の作動を示したもので、ピストンを蒸気で前後から押す構造である。高圧の蒸気を送り込んでピストンを押し、レバー機構により蒸気の流入口と排気口を自動的に切り換えて往復運動を行い、その動力をクランク軸で回転運動に変えている。なお、蒸気機関には、蒸気の圧力でタービンを回転させる蒸気タービンがある。以前は、蒸気機関による浮きクレーンや鉄道クレーン等が広く使用されていたが、蒸気機関の効率は悪いため、現在はほとんど使用されていない。

         

電動機の種類

 電動機は、電源の違いによって交流電動機と直流電動機に分けることができる。また、交流電動機は更に次のように分類することができる。
1. 整流子電動機 ( 電気ドリル、電動ミシンに使用 )
2. 同期電動機   ( 電気時計、特殊産業機械に使用 )
3. 単相誘導電動機 ( 家庭用扇風機、冷蔵庫に使用 )
4. 三相誘導電動機 ( クレーン、一般産業機械に使用 )

 ● 整流子電動機(ユニバーサルモーター)

 整流子電動機は、整流子とブラシを備えた整流子型ロータによる電動機で、直巻きの直流電動機を交流で使用している。この電動機は電流の流れが逆になれば極性も逆になるため、交流を用いても回転方向は変わらない。直流でも使用することができるためユニバーサルモーターと呼ばれている。起動トルクが大きく、 負荷が増大すると回転速度が遅くなってトルクが増大してノイズが発生するが、高速回転が可能なため電気ドリルやミシン等に使用されている。

       

 ● 同期電動機(シンクロナスモーター)

 同期電動機は、無負荷時や大きな負荷を掛けた時も回転数が変わらず、 電源周波数に比例した速度で回転するため同期電動機と呼ばれている。回転磁界と回転子の回転速度が一致する電動機のため、電源周波数50Hzの地域で使用する場合と60Hzの地域で使用する場合では電動機の回転速度が異なる。同期電動機には、単相と三相があり、単相は電気時計等に使用されている。三相の同期電動機は、速度を変える必要がないポンプや送風機等の特殊産業機械に使用されている。

● 単相誘導電動機

 単相誘導電動機は、構造が簡単な上に耐久性、安全性、経済性に優れているため、一般家庭の冷蔵庫や扇風機等の電気製品に使用されている。

         

● 三相誘導電動機(インダクションモーター)

 クレーンやデリックには、巻上げや走行に応じた電動機がそれぞれ装備されているが、特殊な場合を除いて三相誘導電動機が広く使用されている。

電動機を理解するための法則

 電動機の分野は、非常に奥が深く、様々な法則や高度な数式が存在する。電動機を知るためには、少なくとも以下の法則を理解しておく必要がある。

● 右ねじの法則

 一般的なねじは、図のように右に回すと矢印の方向に進む。導線にねじの進行方向と同じ方向に電流を流すと、ねじの回る方向に磁界が発生する。 この法則は、フランスのアンペールが発見したもので、電流によって生じる磁界の方向とねじの回転する方向が一致するため、アンペールの法則あるいは右ねじの法則と呼ばれている。

        

● 右手の法則

 導線を巻いたコイルに電流を流すと、右ねじの法則に従って磁力線がコイルの外を通って再びコイル内に入り込む磁界ができる。このような磁石を電磁石という。 図のように握った右手の4本の指が電流の流れる方向を示し、親指がコイル内の磁界の向き(N極)を示す。
● 磁 界 (磁力のおよぶ場)
● 磁 極 (磁力の集中している所)
● 磁力線 (N極からS極へ向かう磁力の軌跡)

   

● ファラデーの電磁誘導の法則

 電流計をコイルにつなぎ、そのコイルに磁石を素早く入れたり出したりしてみる。 するとコイルに電流が流れて電流計の針が振れる。 つまり、 コイルを通る磁束の変化によってコイルに起電力が発生したのである。この実験は、磁石を動かさずにコイルを動かしても同じ結果が得られる。誘導電流と磁束の方向は、コイルの磁石のN極を入れた側にN極ができ、電流は右ねじの法則とは逆の方向に流れる。起電力が発生する現象を電磁誘導、電磁誘導による電圧を誘導起電力、流れた電流を誘導電流といい、今日の発電機の基本原理になっている。イギリスの物理学者ファラデーがこの実験を行ったためファラデーの電磁誘導の法則と呼ばれている。

           

 ファラデーは、次のような実験も行っている。鉄製の環に2つのコイルを巻き、一方のコイルに電流計を取付け、もう片方のコイルには電流を流せるようにした。 コイルに電流を流した瞬間、 電流計の針が振れ、切った瞬間にも電流計の針が反対方向に振れるという結果を得た。しかし、電流を流し続けた場合には何事も起こらなかった。 つまり、 コイルのスイッチを入れたり切ったりする瞬間だけ磁束が変化し、もう一方のコイルに起電力が発生したのである。これを相互誘導という。相互誘導によって発生した起電力を相互誘導起電力、流れた電流を相互誘導電流という。

         

● レンツの法則

 電磁誘導によって生じる誘導起電力は、磁束の変化を妨げる方向に生じる。つまり、磁束の変化を嫌う性質がある。 したがって、磁石をコイルに近づけると磁束数が増え、コイルは磁束数を減らす方向に磁束を発生させる。また、磁石を遠ざけると磁束数が減るため、今度は逆に磁束数を減らさない方向に磁束を発生させる。1834年、ドイツの物理学者レンツによってこの法則が発見されたため、レンツの法則と呼ばれている。



 磁石をコイルに近づけると磁束数が増える。
 このため、コイルは磁束数を減らす方向に磁束を発生させる。


 磁石をコイルから遠ざけると磁束数が減少する。
 このため、コイルは磁束数を増やす方向に磁束を発生させる。
        

● フレミングの左手の法則

 電流の方向を切り替えられるように工夫した簡単なコイルを図のようにN極とS極の磁界の中に置き、コイルに電池をつないで電流を流す。するとコイルにトルク(回転力)が発生して矢印Fの方向に回転する。これが直流電動機の原理で、左手の親指が力の方向(F)、人差し指が磁界の方向(B)、中指が電流の方向(I)を示している。 この法則は、 イギリスの物理学者フレミングが発見したため、 フレミングの左手の法則と呼ばれている。それぞれの方向は左手の親指から順にF・B・Iとアルファベットで読んだり、逆に中指から電・磁・力と読んで覚えるのが一般的である。

        

● アラゴの円板

 アルミ板又は銅板をU字形磁石で挟み、図の矢印方向に磁石を動かすと、円板は磁石と同じ方向に回転する。1824年、この現象をフランスの物理学者アラゴが発見したため、アラゴの円板と呼ばれている。円板を挟んだ磁石が円板表面を移動すると磁界が変化し、電磁誘導を起こして起電力を発生させ、磁界の変化を妨げる方向に電流が流れる。この電流は、磁石の近くで渦状になるため、渦電流あるいは渦流と呼ばれている。
 渦電流と磁石の磁界は互いに作用し、フレミングの左手の法則に従い、円板が磁石の移動する方向と同じ方向に回転する。磁石が円板表面を移動することで磁界が変化するということは、見方を変えると時間的変化で磁界が発生したといえる。つまり、磁石と円板が同じ回転であれば磁界に時間的変化は起こらないため、回転力は得られない。したがって、円板は時間的変化を得るために磁石の回転速度よりも少し遅れて回転することになる。回転磁界によって円板が回転するこの原理は、誘導電動機(インダクションモータ)の原理として広く知られている。このアラゴの円板を利用したものには、各家庭に設置されている積算電力計(電気料金を計算するメーター)がある。また、クレーンの速度制御にも使用されている。

          
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