クレーンの用語
 クレーンの定義と分類
 天井クレーン
 ジブクレーン
●  橋形クレーン/アンローダ
 ケーブルクレーン/テルハ
 スタッカークレーン
 クレーンの構造部分
 クレーンの作動装置
 ワイヤロープ
 クレーンのつり具
 歯 車
 ボルト/ナット/座金
 軸/キー/軸受等
 ブレーキ
 安全装置
 クレーンの取扱い
 クレーンの保守管理
 電気の基礎知識
 原動機
 三相誘導電動機
 直流電動機
 制御器と付属機器
 給電装置
 絶縁/接地/測定機器
 感電と対策
 特定機械と製造許可
 クレーンの設置
 クレーンの性能検査
 変更届と変更検査
 クレーンの休止と廃止
 建設物等との間隔
 クレーンの負荷条件等
 使用の制限
 使用禁止の玉掛用具
 クレーンの合図
 クレーンの自主検査
 クレーンの免許等
原動機
 電気エネルギー、燃焼エネルギー、 蒸気による熱エネルギー等を機械力に変える装置を原動機といいます。クレーンやデリックの原動機には、電気エネルギーを機械力に変える電動機(モーター)が使用されています。軽油やガソリン等の燃焼エネルギーを機械力に変える内燃機関は、移動式クレーンの原動機等に広く用いられています。
 移動式クレーンには、電動機又はディーゼルエンジン等の内燃機関から機械力を受け、これを一旦、油圧に変換し、更にこの油圧を機械力に変える油圧装置が用いられています。油圧ポンプ等を駆動する内燃機関を一次原動機と呼ぶことから、油圧装置は二次原動機と呼ばれています。 以前は熱エネルギーを機械力に変える蒸気機関による浮きクレーンや鉄道クレーンが広く使用されていましたが、 蒸気機関の効率は悪いため、現在ではほとんど使用されていません。
内燃機関
 内燃機関には、軽油を燃料とするディーゼルエンジンとガソリンを燃料とするガソリンエンジンがあります。 ガソリンエンジンは混合気をスパークプラグの電気花火によって着火させ、 ディーゼルエンジンは空気を圧縮して高温になったところに燃料を噴射して自然発火させています。ディーゼルエンジンは効率が良く、燃料経費も安いため、機動性の要求される移動式クレーンに広く使用されています。
油圧装置
 油圧装置は、ディーゼルエンジン等の原動機の動力で駆動させた油圧発生装置で油タンクの作動油を油圧ポンプで吸い込んで加圧し、油圧シリンダや油圧モータ等の駆動装置を駆動させるもので、油圧制御弁によって油圧を制御しています。
蒸気機関
 蒸気機関を原動機に用いた代表的なものには、蒸気機関車があります。蒸気機関は、ボイラで水を蒸発させて作った高圧の蒸気エネルギーを機械的力に変える装置で、機動力が大きく速度制御を自由に行うことができます。
電動機の種類
 電動機は、電源の違いによって交流電動機と直流電動機に分けることができ、交流電動機は更に次のように分類されています。
交流電動機の種類と用途
整流子電動機 電気ドリル・電動ミシン
同期電動機 電気時計・特殊産業機械
単相誘導電動機 家庭用扇風機・冷蔵庫
三相誘導電動機 クレーン・一般産業機械
整流子電動機(ユニバーサルモーター)
 整流子電動機は整流子とブラシを備えた整流子型ロータによる電動機で、直巻きの直流電動機を交流で使用します。この電動機は、電流の流れが逆になれば極性も逆になるため、交流を用いても回転方向は変わらず、直流でも使用することができるため、ユニバーサルモーターと呼ばれています。 起動トルクが大きく、負荷が増大すると回転速度が遅くなってトルクが増大してノイズが発生しますが、高速回転が可能なため電気ドリルやミシン等に使用されています。
同期電動機(シンクロナスモーター)
 同期電動機は、無負荷時や大きな負荷を掛けた時も回転数が変わらず、電源周波数に比例した速度で回転するため同期電動機と呼ばれています。回転磁界
と回転子の回転速度が一致する電動機のため、電源周波数50Hzの地域で使用する場合と60Hzの地域で使用する場合では電動機の回転速度が異なります。
同期電動機には単相と三相があり、単相は電気時計等に使用されています。 三相の同期電動機は、 速度を変える必要がないポンプや送風機等の特殊産業機
械に使用されています。
単相誘導電動機
 単相誘導電動機は、構造が簡単な上に耐久性、安全性、経済性に優れているため、冷蔵庫や扇風機等の一般家庭の電気製品に使用されています。
三相誘導電動機(インダクションモーター)
 クレーンやデリックには、巻上げや走行に応じた電動機がそれぞれ装備されていますが、特殊な場合を除いて三相誘導電動機が広く使用されています。
電動機に係る法則
右ねじの法則
 一般的なねじは、 図のように右に回すと矢印の方向に進みます。導線にねじの進む方向と同じ方向に電流を流すと、ねじの回る方向に磁界が発生します。
 この法則は、フランスのアンペールが発見したもので、電流によって生じる磁界の方向とねじの回転する方向が一致するため、右ねじの法則と呼ばれています。
右手の法則
 導線を巻いたコイルに電流を流すと、 右ねじの法則に従って磁力線がコイルの外を通って再びコイル内に入り込む磁界ができます。 このような磁石を電磁石といいます。図のように握った右手の4本の指が電流の流れる方向を示し、親指がコイル内の磁界の向き(N極)を示します。
磁 界 磁力のおよぶ場
磁 極 磁力の集中している所
磁力線 N極からS極へ向かう磁力の軌跡
ファラデーの電磁誘導の法則
 コイルに電流計をつなぎ、そのコイルに磁石を素早く入れたり出したりしてみる。すると、コイルに電流が流れて電流計の針が振れます。つまり、コイルを通る磁束の変化によってコイルに起電力が発生したのです。この実験は磁石を動かさずにコイルを動かしても同じ結果が得られます。
 誘導電流と磁束の方向は、コイルの磁石のN極を入れた側にN極ができ、電流は右ねじの法則とは逆の方向に流れます。起電力が発生する現象を電磁誘導、電磁誘導による電圧を誘導起電力、流れた電流を誘導電流といい、今日の発電機の基本原理になっています。 イギリスの物理学者ファラデーがこの実験を行ったため、ファラデーの電磁誘導の法則と呼ばれています。
 ファラデーは、次のような実験も行っています。鉄製の環に2つのコイルを巻き、一方のコイルに電流計を取付け、もう片方のコイルに電流を流すと、 電流を流した瞬間に電流計の針が振れ、 切った瞬間に電流計の針が反対方向に振れると
いう結果を得ました。しかし、電流を流し続けた場合は何事も起こらない。つまり、コイルのスイッチを入れたり切ったりする瞬間に磁束が変化し、もう一方のコイルに起電力が発生するのです。これを相互誘導といい、相互誘導によって発生した起電力を相互誘導起電力、流れた電流を相互誘導電流といいます。
レンツの法則
 電磁誘導によって生じる誘導起電力は、磁束の変化を妨げる方向に生じます。つまり、磁束の変化を嫌う性質があります。したがって、磁石をコイルに近づける
と磁束数が増えるため、コイルは磁束数を減らす方向に磁束を発生させます。磁石を遠ざけようとすると磁束数が減るため、今度は逆に磁束数を減らさない方向に磁束を発生させようとします。ドイツの物理学者レンツによってこの法則が1834年に発見されたため、レンツの法則と呼ばれています。
磁石をコイルに近づけると磁束数が増えるため、コイルは磁束数を減らす方向に磁束を発生させます。
磁石をコイルから遠ざけると磁束数が減少するため、コイルは磁束数を増やす方向に磁束を発生させます。
(ドット) 矢を真正面から見た図で、電流が手前に流れていることを示す。
(クロス) 矢を真後から見た図で、電流が奥に流れていることを示す。
フレミングの左手の法則
電流の方向を切り替えられるように工夫した簡単なコイルを図のようにN極とS極の磁界の中に置き、コイルに電池をつないで電流を流します。 すると、コイルにトルク(回転力)が発生して矢印Fの方向に回転します。これが直流電動機の原理で左手の親指が力の方向(F)、人差し指が磁界の方向(B)、中指が電流の方向(I)を示しています。この法則は、イギリスの物理学者フレミングが発見したため、フレミングの左手の法則と呼ばれています。それぞれの方向は、左手の親指から順にF・B・Iとアルファベットを読んだり、逆に中指から電・磁・力と読んで覚えるのが一般的で、各コイルを相互に結線したものを巻線といいます。
アラゴの円板
 アルミ板又は銅板をU字形磁石で挟み、図の矢印方向に磁石を動かすと、円板は磁石と同じ方向に回転します。 この現象を1824年にフランスの物理学者アラゴが発見したため、アラゴの円板と呼ばれています。円板を挟んだ磁石が円板表面を移動することで磁界が変化し、電磁誘導を起こして起電力を発生させ、 磁界の変化を妨げる方向に電流が流れます。 この電流は磁石の近くで渦状になるため、渦電流あるいは渦流と呼ばれています。
 渦電流と磁石の磁界は互いに作用し、フレミングの左手の法則に従って円板が磁石の移動する方向と同じ方向に回転します。磁石が円板表面を移動することで磁界が変化するということは、見方を変えると時間的変化で磁界が発生したといえます。つまり、磁石と円板が同じ回転であれば、磁界に時間的変化は起こらないため、回転力が得られないということです。 したがって、円板は時間的変化を得るために磁石の回転速度よりも少し遅れて回転することになります。
 回転磁界によって円板が回転するこの原理は、誘導電動機 (インダクションモータ)の原理として広く知られています。 このアラゴの円板を利用したものには、各家庭に設置されている積算電力計(電気料金を計算するメーター)があります。また、クレーンの速度制御にも用いられています。