移動式クレーンの定義と分類

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 移動式クレーン運転士試験では、移動式クレーンの定義と法令上の条件を満たしたものを移動式クレーンといいます。どのような装置であっても、荷を人力でつり上げるものは移動式クレーンに該当しません。また、すべての要件を満たしていても、つり上げ荷重が0.5t未満の場合は移動式クレーンに該当しません。

移動式クレーンの定義

 動力をもって荷をつり上げ、これを水平に運搬することを目的とする機械装置を移動式クレ
ーンという。クレ−ン等安全規則においては、原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるものと定められている。クレーン等安全規則上、つり上げ荷重が0.5t未満の移動式クレーンはクレーン等安全規則の適応を受けないため、つり上げ荷重が0.5tの未満のものは移動式クレーンに該当しない。
● 移動式クレーンの要件
 1. 動力を用いて荷をつり上げるもの(人力によるものは含まない)
 2 荷を水平に運搬することを目的とする機械装置(人力によるものも含む)
 3. 原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるもの
 4. つり上げ荷重が0.5t以上のもの

         

移動式クレーンの分類

 移動式クレーンは、クレーン装置である上部旋回体、作業装置のフロントアタッチメント、それを架装する下部走行体で構成されている。上部旋回体にはジブを装備し、巻上げ、起伏、旋回等の作動を行うことができる。移動の方式には、陸上、レールの上、水上を移動する方法がある。走行装置や機体の安定を確保するため、移動式クレーンにはアウトリガやクローラが装備されている。上部旋回体及び下部送行体の構造、動力伝達方式の違いにより、移動式クレ
ーンは次のように分類されている。

陸上移動 トラッククレーン トラッククレーン
積載形トラッククレーン
レッカー型トラッククレーン
オールテレーンクレーン
ホイールクレーン ホイールクレーン
ラフテレーンクレーン
クローラクレーン
鉄道クレーン
クレーン機能を備えた車両系建設機械
水上移動 浮きクレーン

 ● トラッククレーン Truck Crane

 トラッククレーンは、下部走行体に旋回サークルやアウトリガを装備し、その上部にクレーン装置を架装したもので、下部走行体には走行用運転室、上部旋回体にはクレーン操作用の運転室がそれぞれ別に設けられている。トラッククレーンは、操作性、機動性に富んでいるため小型から大型まで様々な種類があり、幅広い用途に使用されている。トラッククレーンには、油圧ポンプを駆動して油圧モータや油圧シリンダを作動させる油圧式と、動力を機械的に伝達する機械式がある。近年は、純然たる機械式は少なく、各部に油圧の機構を使用した複合方式が用いられている。このため、現在では油圧式と機械式を動力伝達方式では区別せず、単に箱型構造ジブのものを油圧式、ラチス構造ジブのものを機械式と呼ぶ。

              
          油圧式トラッククレーン    機械式トラッククレーン

 大型のトラッククレーンは、ほとんどが専用のシャーシが用いられている。小型のトラッククレーンの場合は、トラックメーカーが製造する汎用シャーシに、クレーンメーカーが上部旋回体を架装している。下記写真の上部旋回体は、つり上げ能力がまったく同じものであるが、エンジンや車体等の下部走行体は製造メーカーによってそれぞれ異なっている。顧客は、好みによって移動式クレーンを自由に選択することができる。

       

 ● 積載型トラッククレーン Loader Crane

 車両積載形トラッククレーンは、通常のトラックのシャーシをサブフレームで補強し、積卸用のクレーン装置と貨物積載用の荷台を備えているのが特徴である。クレーン装置をトラックの運転室と荷台の間に架装し、1つの原動機で走行とクレーン作業を行うもので、つり上げ能力は3t 未満のものが多く使用されている。クレーンの操作は、機体側方で行う方式が多く用いられているが、安全面からリモコンやラジコンでの操作方式が増えている。

                   

 ● レッカー型トラッククレーン Wrecker Type Truck Crane

 レッカー形トラッククレーンは、トラックのシャーシを専用のサブフレームで補強し、クレ
ーン装置を架装している。通常のトラッククレーンとは異なり、ジブ長さは短く、10m程度しかない。このため、建築物の鉄骨建方には適さない。アウトリガの他に シャシ後部に事故車けん引用のピントルフックやウインチ等を装備し、道路の故障車や事故車等の交通障害の原因となる車両を移動させる作業に使用されている。また、建屋内での機械設備の据付工事等にも使用されている。

                 

 ● オールテレーンクレーン All Terrain Crane

 オールテレーンクレーンは、トラッククレーンの高速走行とラフテレーンクレーンの不整地走行を合せ持っている。トラッククレーンと違い、前後輪駆動、前後輪操向が可能な専用キャリアを有し、各種のステアリングモードでの方向変換に優れている。車両重量を緩和するため多軸方式が採用されている。この方式は主に大型クレーンで生かされ、下部走行体と上部旋回体を分割して輸送することができる。走行は下部走行体の運転室で行い、クレーン作業は上部旋回体の運転室で行う。

        

 ● ホイールクレーン Wheel Crane

 ホイールクレーンは、ゴムタイヤ付きの車軸に支えられた台車の上にクレーン装置を架装し
1つの運転室でクレーン作業と走行を行う構造である。クレーン作業と走行の動力には、走行体に設けられた原動機を使用している。前輪駆動、後輪操向の走行方式で、車輪には四輪式と三輪式(前二輪、後一輪)がある。一般にはアウトリガが装備されているが、装備されていないものはタイヤの外側に鉄輪を取付け、クレーン作業時に鉄輪が接地して安定性を増す構造である。ホイールクレーンが行っていた作業は、ではフォークリフトに取って代わられたため、現在はあまり見かけない。

                       

 ● ラフテレーンクレーン Roughterrain Crane

 ラフテレーンクレーンは、2軸4輪駆動式で、1つの運転室でクレーン作業と走行を行うことができる。前2輪操向、後2輪操向、4輪操向、かに操向の4種類の操向方式を備えているため、狭隘地での機動性に優れている。また、大型タイヤを装備した全輪駆動式により、不整地や比較的軟弱な地盤を走行することができる。

       

 ● クローラクレーン Crawler Crane

 クローラクレーンは、クローラ(履帯)を巻いた台車の上にクレーン装置を架装し、上部旋回体に原動機、巻上装置、運転室等を装備している。下部走行体がクローラのため、走行速度は1〜3km/hと極めて遅く、公道の走行には適さない。ホイール式に比べて左右の履帯の接地面積が広く、安定性に優れているため、比較的軟弱な地盤や不整地を走行することができる。

                 

 ● 鉄道クレーン Railway Crane , Locomotive Crane

 鉄道クレーンは、レール走行用の車輪を持った台車(ロコ)にクレーン装置を架装して軌道のレールの上を走行するもので、鉄道の保線業務の荷役作業、救援作業等に用いられている。鉄道クレーンは、蒸気機関車にクレーン装置を取付けたものという意味のロコモチブクレーンとも呼ばれている。近年は、クレーン等に転車台(機体全体を浮かせて回転させる装置)や、軌道走行用車輪を装備した軌道兼用車が用いられている。軌道兼用車は、踏切から軌道をまたいで停止させ、転車台コントロールパネルの操作で転車台を自動張出して機体を浮かせる。次にクレーンを軌道の進路方向へ回転させ、油圧シリンダで車輪を出してレールの上に乗せる。続いて転車台を格納し、軌道を走行できる状態にすることができる。

     
              鉄道クレーン         軌道陸上兼用ラフテレーンクレーン

 ● 浮きクレーン Floating Crane

 浮きクレーンは、浮力のある箱形の台船(ポンツーン)にクレーン装置を架装したもので、曳航される非自航式と自航式がある。また、ジブが起伏するものと固定されたもの、クレーン装置が旋回するものとしないものがある。主な用途としては、港湾、沿岸、河川、海上等の土木工事、大型重量物の荷役、据付工事、船舶のぎ装、サルベージ作業等に使用されている。

クレーン形式での分類 船体形式での分類
旋回式 ジブ起伏式 自航式
ジブ固定式
非旋回式 ジブ起伏式 非自航式
ジブ固定式

 ● クレーン機能を備えた車両系建設機械

 建設機械の多機能多様化に伴って、油圧ショベルにクレーン機能を備えたクレーン付き油圧ショベルが開発されている。油圧ショベルとして使用する場合には、車輌系建設機械運転技能講習の資格が必要であり、移動式クレーンとして使用する場合には移動式クレーン運転士免許又は小型移動式クレーン運転技能講習の資格が必要になる。

                  
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