油圧制御弁

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 油圧制御弁には、圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁等があり、油圧回路の多くの箇所で使用されています。





圧力制御弁

 圧力制御弁とは、ポンプからの吐出圧を調整したり、二次的に発生した圧力を逃がして機械的損傷を防ぐ目的で使用される機器をいい、次のような種類がある。

 ● リリーフ弁(安全弁)

 リリーフ弁は、油圧が設定以上の圧力に上昇しないように制御する弁で、これにより油圧回路を保護している。移動式クレーンの油圧回路には、リリーフ弁が必ず使用されている。リリ
ーフ弁の設定圧は弁に取付けられている調整ねじでスプールを押付けているスプリングの力を調整している。油圧が設定圧又はそれ以下の時には、スプリングで押付けられているスプールが弁の入口からタンク側への油路を閉じている。油圧が設定圧を超えると、スプリングの力よりも強い油圧の力により、スプールが押し上げられ、弁の入口からタンク側への油路が開き、圧油の一部がタンクへ流れて圧力が過度に上昇するのを防ぐ。

                 

 ● 減圧弁

 油圧回路の油圧より低い油圧を使用する必要がある場合は、減圧弁を用いて減圧している。移動式クレーンにおいては、巻上ウインチのクラッチ回路等に使用されている。スプールは、スプリングの力で下方に押付けられ、一次側(高圧側)の圧油は減圧されて二次側に常時流れる。その一部は、スプール孔を通って圧力調整のニードル弁に作用している。二次側の圧力が設定圧を超えようとすると、ニードル弁が押され、ドレン口から圧油がタンクへ流れる。その結果、スプールが押し上げられ、二次側出口の開きを小さくして減圧が行われる。これにより一次側回路の圧力が変化しても減圧出口である二次側は一定の圧力を得られ、一次側の圧力が設定圧力よりも低い場合には二次側からの逆流を防ぐことができる。

              

 ● シーケンス弁

  シーケンスには、あらかじめ定められた順序に従って各段階ごとに制御するという意味がある。シーケンス弁は、別々に作動する2つの油圧シリンダの一方の作動が終了した時、もう一方の油圧シリンダを作動させる場合に用いられる。移動式クレーンにおいては、ジブの伸縮回路で作動順序を制御するために使用されている。一次側の油圧が設定圧又はそれ以下の時にはスプールが押し下げられた状態で二次側への油路を閉じている。一次側の油圧が設定圧を超えると、スプールが押し上げられて二次側の出口が開く。

         

 ● カウンタバランス弁

  カウンタバランス弁は、一方向の流れに設定した背圧(流量制限)を与え、逆方向の流れは自由に流れさせる弁で、降下速度を一定に保つために用いられている。移動式クレーンにおいては、ジブの起伏、伸縮、巻上げ等の回路に使用されている。移動式クレーンの下げ方向への操作を行う時、自重や荷重によってジブが急降下しないようにするために用いられているもので、ジブ起伏シリンダが下降する時、起伏シリンダに掛かる荷重が大きい場合は、下降速度の制御ができなくなる。カウンタバランス弁の一次側をシリンダの油の戻り側につないで戻り油圧を与え、スプールの押上量を加減することによって二次側出口への油量を制御し、シリンダの下降速度を一定に保つ。シリンダを上昇させる時は、圧油は逆止め弁を通って流れる。なおカウンタバランス弁にはパイロット圧を外部から取り、遠隔操作ができる構造のものがある。

            

 ● アンロード弁

 アンロード弁は、アキュムレータと併用して用いられることが多い。 回路の油圧が規定圧力に達した時、ポンプを無負荷運転(アンロード)させるために弁が作動し、圧力を低下させずにポンプの吐出す流量をそのままタンクに戻す。
 パイロットポペットが閉じている時のパイロットピストンは、P1=P2又はP3<P2であるため、パイロットポペットから離れているが、P2がリリーフ弁の設定圧力まで上昇すると、ピストンが上方に移動し、シートが開いて圧力ポートとタンクポートが通じる。これによりP1又はP2が圧力降下し、逆止め弁が閉じると共にパイロットピストンがパイロットポペットを押し上げる。回路圧力が設定圧力の約80%まで低下すると、パイロットポペットが閉じてポンプが負荷運転し、圧油が自動的にアキュムレータに送り込まれる。

            
                              

流量制御弁

移動式クレーンの流量制御弁には、絞り弁が用いられている。

 ● 絞り弁

 絞り弁は、流量調整ハンドルの操作で流路の開きの大きさを変えて流量を調整するもので、ストップ弁又は可変絞り弁とも呼ばれる。移動式クレーンにおいては、管路の損傷又は管路の交換時の作動油の流失防止や、作動油タンクの油抜き等で流路の流れを止めるために使用されている。絞り弁は、調整ねじを締めて油圧の流れを調整している。

                

方向制御弁

方向制御弁には、パイロットチェック弁、逆止め弁、方向切換弁がある。

 ● パイロットチェック弁

 パイロットチェック弁は、パイロット圧(油圧)をチェックし、ある条件下において逆方向に油を流せるようにしている。移動式クレーンにおいては、アウトリガ回路破損時の垂直シリンダの縮小防止に使用されている。アウトリガの使用中に配管が破損した場合は、圧油が放出されてアウトリガが縮小する事態が発生する。パイロットチェック弁は、これを防止するために圧油の入口側と出口側との圧力差を取り、回路の圧油の差が大きくなると、縮小側の回路を閉じてシリンダの縮小を停止させる。

           

 ● 逆止め弁

 圧油が所定の圧力に達すると、作動油がスプールを押して一次側から二次側へ油を自由に通過させる。ただし、二次側から一次側への流れは完全に阻止する働きがある。移動式クレーンにおいては、単独あるいは他の弁に組み込まれて使用されている。

           

 ● 方向切換弁

 方向切換弁は、圧油の流れる方向を切換える弁で、油圧シリンダの運動する方向や油圧モータの回転を切り換るものである。方向切換弁には、回転形と直線形があり、切換弁のポート数(接続口の数)と作動位置の数によって分類されている。操作方式には、人力式、機械式、油圧パイロット式、電磁式等がある。移動式クレーンには、直線形4ポート3位置切換弁がアウトリガの張出しに使用されている。

       
                     回転形方向切換弁
         
          クロズトセンター形          センターバイパス形

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