作動油

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 作動油は,油圧装置の中で動力伝達媒体として使用される流体で、潤滑、防錆、冷却等の作用があります。油圧装置の機能を十分に発揮させるためには、装置に適合した作動油の選択と管理が重要になります。


作動油に求められる性質

 移動式クレーンに使用される作動油には、次のような性質が求められている。また、作動油の多くは、酸化安定性や耐磨耗性改善のために添加剤が加えられている。
● 油温変化による粘度変化が少ないこと
● 引火点が高く、燃えにくいこと
● 周動部の潤滑剤としての耐磨耗性が大きいこと
● 長期間使用しても物理的、化学的変化や劣化をしないこと
● 気泡が生じにくく、泡が消えやすいこと
● 水分の混入による乳化が起こりにくいこと
● 低温での凝固が起こりにくいこと
● 金属に対しての腐食作用がなく、錆び止め効果があること
● シールや塗料等の材質に影響を与えないこと
● 成分の分離が生じないこと
● 油圧装置に有害な異物や毒物を含まないこと

 ● 粘性、粘度

 管路の油の流れを妨げようとする性質を粘性といい、粘性の程度を示す値を粘度という。作動油の粘度は、温度が上昇するほど低くなる。温度が上昇し過ぎた場合は、油の潤滑性が悪くなり、劣化を促進したりポンプ効率を悪くする。逆に作動油が適正油温より低くなり過ぎた場合は、粘度が高くなり、ポンプの運転に大きな力を要し、磨耗を促進する。適性な粘度の範囲は、ポンプの種類や能力によって異なるため、メーカの指定する粘度を使用しなければならない。作動油の選択は、温度範囲の下限は外気温度の低い方で選び、上限は使用限界温度によって選ぶ。

作動油の使用限界温度
ISO VG NO 32 46 68
選択基準(外気温度℃) −15〜+15 −10〜+25 −5〜+35
使用限界温度(℃) +70 +80 +90

 ● 引火点

 作動油の引火点は、180〜240℃。油圧回路が破損して作動油が吹き出した場合、火気が近くにあれば引火する恐れがある。

 ● 劣化(酸化)

 作動油の成分が化学反応を起こして変質することを劣化という。作動中の作動油は、金属や空気に接して激しく攪拌される。水分や金属粉が混入したり、油温が高いと劣化しやすい。

作動油の劣化による変化と原因
作動油 劣化や汚染による変化 原 因
比重 増加 作動油の劣化、異物混入、異種油混入
水分の含有量 増加 外部からの侵入
沈殿物含有量 増加 作動油の劣化、異物混入
引火点 低下 作動油の劣化、異物混入
色相 透明度が低下 作動油の劣化、異物混入、乳化
粘度 増大 作動油の劣化
酸価 増大 油温の上昇、金属粉の混入

作動油の判定と交換

 作動油タンクに出入りする空気は、ごみや水分を持ち込む。装置自体も磨耗によって金属粉を発生させるため、定期的に作動油を交換する必要がある。劣化や異物の混入により、作動油が使用限度に達しているかどうかを判定する方法には、作動油を目視で判定する官能検査と、科学的分析による性状試験がある。科学的分析による性状試験は、色彩、粘度、含水有量、沈殿物含有量、比重、引火点、酸化を測定し、作動油の劣化を定量的に判別する。目視による判定は、検査する作動油を作動油タンクから採取し、採取した作動油と同種の未使用の作動油をそれぞれの試験管に入れて比較する。
 採取した作動油が白濁していたり泡立っている場合は、作動油タンクの不具合や管理不足による劣化といえる。正常な作動油は、通常0.05%程度の水分を含んでいるが、それ以上の水分がタンクに入ると作動油は乳白色に変色する。グリースが混入した場合は、泡立つ。劣化した作動油をそのまま使用すると、油圧ポンプや油圧機器の循環性が失われ、シールが腐食する。作動油に異物が混入すると、異物が周動部や隙間に入り込み、異常摩擦が生じて金属粉等の新たな異物を発生させる。その結果、異常音、異常発熱、速度低下、圧力上昇不良、油漏れ等が生じる。そのまま放っておくと、大がかりな分解修理が必要になる。汚れが著しい場合には、作動油の交換やクリーニングを行い、作動油タンクのエレメントを交換する。

          

目視による作動油の判別
外 観 におい 状 態 対 策
透明で色彩変化なし 良好 そのまま続けて使用する
透明であるが色が薄い 異種油混入 粘度を調べて良ければそのまま使用する
乳白色に変化しいる 気泡や水分が混入 水分を除去する
黒褐色に変化している 悪臭 劣化している 作動油を交換する
透明だが小さな黒点がある 異物混入 ろ過する
泡立ちがみられる グリース混入 作動油を交換する

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