移動式クレーンの用語は、移動式クレーンの知識を学ぶために必要不可です。それぞれの用語の意味を正しく理解しましょう。
上部旋回体の一端を支点とした腕をジブといい、箱型構造ジブ(伸縮ジブ)、トラス構造ジブ(継ぎジブ)、ジブを伸長するための補助ジブ等がある。メーカならびにユーザは、箱形構造ジブをブーム(補助ジブは除く。)と呼んでいる。ジブの長さは、ジブフートピンの中心からジブポイントまでの長さである。最も短いジブの長さを基本ジブ長さ、最も長いジブの長さを最大ジブ長さという。箱型構造ジブは、ジブの全縮状態が基本ジブ長さ、全伸の状態が最大ジブ長さになる。補助ジブを取付けた場合は、補助ジブ付き最大ジブ長さとて表す。
ジブ基準線と地上面(水平面)とがなす角度をジブの傾斜角という。ジブ基準線は、ジブ下部のフートピンの中心とジブ上部のジブポイントを結んだ線をいう。
巻上装置のドラムに巻上用ワイヤロープを巻き取ったり巻き戻したりする作動を巻上げ、巻下げといい、巻上げ、巻下げの運動を総称して巻上げと呼ぶ。巻下げには、動力を用いない自由降下(フリーフォール)と、巻上装置の動力による動力降下がある。自由降下は、ドラムのクラッチを切り、ドラムの回転をフリーの状態にして、足踏みブレーキの加減により速度を調整しながらフックを降下させる方法をいうもので、この状態では自動ブレーキが働かないため注意する必要がある。
旋回中心からジブポイントピン(フックの中心)より下ろした鉛直線までの水平距離を作業半径という。ジブ長さが同じ場合、傾斜角が小さくなれば作業半径は大きくなり、傾斜角が大きくなれば作業半径は小さくなる。最大の作業半径を最大作業半径、最小の作業半径を最小作業半径といい、作業半径が大きくなるほど定格荷重は小さくなり、作業半径が小さくなるほど定格荷重は大きくなる。
移動式クレーンの構造及び材料ならびにジブの傾斜角及びジブの長さに応じて負荷させることができる最大の荷重から、フック、フックブロック、グラブバケット等のつり具の質量を引いた荷重を定格荷重という。定格荷重は、その状態におけるジブ傾斜角とジブ長さの時に実際につることができる荷重をいうもので、傾斜角やジブ長さが変わると定格荷重の値も変わる。
定格総荷重とは、移動式クレーンの構造及び材料ならびにジブの傾斜角及びジブ長さに応じて負荷させることができる最大の荷重にフック、フックブロック、グラブバケット等のつり具の質量を含んだ荷重をいう。つまり、定格荷重につり具の質量を加えた値をいうものである。
アウトリガ又はクローラを最大限に張出し、ジブ長さを最短に、傾斜角を最大にした時に負荷させることができる最大の荷重に、フック、フックブロック、グラブバケット等のつり具の質量を含んだ荷重をつり上げ荷重という。移動式クレーンは、25tクレーンとか50tクレーンと呼ぶが、この値はつり上げ荷重を表したもので、当該移動式クレーンにただ1つしか存在しないものである。
ジブ長さや傾斜角に応じて、フック、グラブバケット等のつり具を有効に上下させる上限と下限との間の垂直距離を揚程という。有効に上下とは、巻過警報装置や巻過停止装置が機能しない距離をいう。つり具を最大に巻下げた時は巻上ドラムにワイヤロープが最低2巻以上残っていなくてはならない。これをロープの捨巻きと呼び、ワイヤロープの摩擦力でロープの取付部分に大きな力が作用しないようにするものである。捨巻きは、移動式クレーン構造規格で2巻以上と定められている。したがって、ドラムに捨巻きを残し、つり具を有効に上げ下げできる上限と下限との間の垂直距離が揚程になる。地上面から上の揚程を地上揚程、地上面から下の揚程を地下揚程、地上揚程と地下揚程を合わせた揚程を総揚程という。地下揚程は、ドラムに巻かれているワイヤロープの長さに限界があるため、ワイヤロープを巻下げる時は注意しなければならない。
移動式クレーンには、通常、巻上装置が2つ設けられている。巻上用ワイヤロープの巻き掛数を増やした重荷重用のものを主巻、単索で荷をつる補助用のものを補巻という。
ジブの取付けピン(フートピン)の支点を中心としてジブが上下に動く運動を起伏という。傾斜角を大きくする運動をジブの上げ又は起こし、傾斜角を小さくする運動をジブの下げ又は倒しという。傾斜角を大きくするほど作業半径は短くなり、傾斜角を小さくするほど作業半径は長くなる。巻上げや巻下げを行わず、ジブの傾斜角を大きくするとつり荷は上がり、傾斜角を小さくするとつり荷は下がる。
ラチス構造のジブは、ジブを継ぎ足してジブの長さを変えることができる。箱型構造のジブは手間を掛けることなくジブを伸ばしたり縮めたりすることができるが、これを伸縮という。ジブを伸ばすと作業半径が大きくなり、ジブを縮めると作業半径が小さくなる。巻上用ワイヤロープの巻上げや巻下げを行わずにジブを伸ばすとつり荷は上がり、ジブを縮めるとつり荷は下がる。
旋回軸を中心にして、上部旋回体が右又は左に回転する運動を旋回という。移動式クレーンを真上から見て、時計回りを右旋回、その反対を左旋回といい、つり荷は旋回中心から円を描くように回る。
移動式クレーンが移動することを走行という。トラッククレーン、ホイールクレーン、クローラクレーンは地上、鉄道クレーンはレールの上、浮きクレーンは水上を走行する。
ロープ径に応じた溝を設け、ワイヤロープが外れたり変形しないようにした滑車をシーブという。シーブは、ワイヤロープの方向を変えたり、つり荷を引っ張る力の大きさを変えることができる。
巻上操作によって、つり荷を地面から離すことを地切りという。移動式クレーンで荷をつり上げる時は、地切り後に巻上げを一旦停止し、つり荷や玉掛けの状態を確認しなければならない。
ワイヤロープ等を使用し、移動式クレーン等のつり具に荷を掛けたり外したりする一連の作業を玉掛けという。
移動式クレーンの巻上げ、起伏、伸縮、旋回等の作業速度は、クレーンが無負荷の状態で、エンジンの回転数を最高に上げた状態の速度を表している。
定格荷重に相当する荷をつり、巻上げ、旋回、走行を行う時のそれぞれの最高速度。
巻上用ワイヤロープを巻上用ドラムに1分間に巻取ることができる速度をm/minの単位で表示する。
フックが1分間に巻上げられる速度をm/minの単位で表示。巻上用ワイヤロープの掛本数を変えると、巻上装置のロープ速度は同じでも、フックが巻上る速度は変わる。2本掛けの場合のフック巻上速度は、巻上用ワイヤロープの巻上速度の1/2になる。3本掛の場合は、フック巻上速度は1/3になる。巻上用ワイヤロープの掛本数が多いほど、フックの巻上速度は遅くなる。
ジブ長さが最短で、ジブの傾斜角が最小の状態から、ジブの傾斜角度を最大にするまでに要する時間をジブ起伏傾斜角の変化と合せて表示。
ジブの起伏傾斜角を60°〜70°に保ち、最短のジブを最長に伸長するまでに要する時間をジブの伸長量と合せて表示。
旋回レバーを全開にした時の1分間当たりの回転数をrpmの単位で表示。
走行姿勢における最高速度をkm/hで表示。