絶縁 / 接地 / 測定機器

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 電気を安全に使用するためには、必要な箇所以外に電気を流さないことが重要です。絶縁体を用いて目的以外の箇所に電流を流さないことを絶縁といいます。電気機器等の導体はこの絶縁体に包まれています。



漏洩電流と絶縁抵抗

 絶縁物の電気抵抗は大きいため、電流は流れにくい。しかし、絶縁体であっても電気がまったく流れない訳ではなく、通常の使用でも絶縁体内部や表面に沿って微小ながら電流は流れている。この僅かに流れる電流を漏洩電流という。絶縁体は、紫外線、熱、雨、風、湿気等による劣化で漏洩電流が増加する。絶縁体が傷ついたりカーボンや金属粉等の導電性の物質が絶縁体を汚損したりすると、漏洩電流は更に増加する。漏洩電流が多くなると、感電や火災の漏電事故を招く等の安全上の問題が生じるため、絶縁抵抗器によって定期的に回路の点検を行って良好な絶縁を保たなければならない。回路の電圧と漏洩電流の比を絶縁抵抗といい、これらの関係は次の式で表すことができる。

      

スパーク

 トロリ線に沿ってホイールやシューが移動する時、コントローラを操作する時、ナイフスイ
ッチで負荷を切る時、整流子やスリップリングの接触によって発生する火花等をスパークという。整流子とブラシの間の接点や周動部が汚れていたり荒れていたりするとスパークが起こりやすく、電圧が高いほど大きなスパークが発生する。
 スパークは、絶縁体の劣化、漏電、ショート、火災等を招くため、できるだけ発生を抑える必要がある。このため、整流子とブラシの間の周動部や接触面は、荒れた状態で使用しないようにしなければならない。ナイフスイッチは、入れる時よりも切る時のスパークが大きい。電気容量の大きい回路のナイフスイッチを切る時は、遮断器又は電磁接触器を開放してからナイフスイッチを切る。その際、できるたけナイフスイッチから離れた側方から素早く切るようにする。

                 

接地(アース)

 電動機や電気機器等の回路の絶縁部分が劣化すると、電流はこれらの外被(ケース、フレーム)等を通って大地に流れようとする。この漏電部分に人体が触れると、身体に電流が流れて感電する。この外被等を導線によって接地抵抗の低い大地に接続して電流を流れやすくしておくと、感電の危険性が少なくなる。電気装置の外被や変圧器の1線から導線で接地抵抗の低い大地に接続することを接地といい、接続する導線を接地線(アース線)という。走行レールが大地に接地されているクレーンは、クレーンを構成している鋼材そのものがアースとしての役割を果たすため、電動機や電気機器の取付ボルト等は確実に締め付け、給電装置に専用の接地線が設けられている場合は、その接地線を接地しなければならない。

     

測定機器

 測定機器には、運転用と整備用があり、運転用の電圧計や電流計等の測定機器はクレーンの運転室等に設置されている。点検整備用には、メガーやテスター等の測定機器が用いられているが、測定を開始する前にこれら測定器の指針を調整ねじでゼロに調整してから使用しなければならない。

 ● 電流計

 電流計は、電流の大きさを測るために用いられる。電流計は、回路に直列接続するものだが誤って並列接続にすると回路が短絡して焼損事故を起こす。電流計には、直流用と交流用があり、交流用電流計の接続の向きはどの方向でも構わないが、直流用はプラス端子を電源の+側
マイナス端子を電源の−側に接続しなければならない。直流電流計を高電流の直流の回路に使用する場合は、分流器(シャント)を使用して回路の直流電流を一定の比率で扱い易い大きさに変換し、その値を測定する。

               

 直流電流計を高電流の直流の回路に使用する場合は、分流器(シャント)を使用して回路の直流電流を一定の比率で扱い易い大きさに変換し、その値を測定している。交流電流計を高電流の交流の回路に使用する場合は、変流器を使用して回路の交流電流を一定の比率で扱い易い大きさに変換し、その値を測定している。

           
            直流電流計              直流電流計

            
            交流電流計               交流電流計

 ● 電圧計

 電圧計は、電圧の大きさを測るために用いられる。電圧計は、回路に並列接続するが、直流電圧計はプラス端子を電源の+側、マイナス端子を電源の−側に接続して使用しなければならない。

             

 直流電圧計を高電流の直流の回路に使用する場合は、倍率器によって回路の直流電流を一定の比率で扱い易い大きさに変換して電圧を測定している。回路の交流電圧が高い場合は、電圧計をそのまま接続して使用することができないため、計器用変圧器(PT)によって一定の比率で降圧し、電圧計の目盛のみ高電圧の目盛りして交流電圧を測定している。

           
           直流電圧計               直流電圧計

          
           交流電圧計               交流電圧計

 ● 絶縁抵抗計(メガー)

 絶縁抵抗計は、電気機器の絶縁の良否を判断するもので、感電や火災の原因となる漏電事故を防ぐために用いられている。可動線輪計器と発電機を組み合せて回路の電圧と漏洩電流の比を測定するもので、100Vから1000V等の用途に応じたものがある。また、ハンドルによって発電機を回して電圧を発生させるものや、電池を用いたオートメガーと呼ばれるものがある。

               

 ● テスター(サーキットテスター)

 小形軽量で持ち運びが便利なテスターには、アナログ式とデジタル式がある。テスターは、電圧、電流、抵抗等を測定できる。
 パネルのAC.Vは交流電圧、DC,Vは直流電圧、DC.mAは直流電流、Ωは抵抗を表している。測定値は、測定レンジに合致した目盛を読み取るが、測定値が予想できない時には、測定範囲の最も大きい端子につないで測定し、次に適当な端子に切替えて測定する。

               

 ● 計器用変圧器(PT又はVT)

 計器用変圧器は、高電圧の電圧の値を測るために用いられる。変圧器は、一般に電力用変圧器を指すため、この装置は特に計器用変圧器と呼ばれる。
 計器用変圧器は、これまでPT(Potential Transformer)という略称が用いられていたが、現在はVT(Voltage Transformer)という略称が用いられている。

              
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