移動式クレーンの用語
 定義と種類
 上部旋回体
 下部走行体
 フロントアタッチメント
 ワイヤロープ
 安全装置
 移動式クレーンの性能
 地盤と作業領域
 移動式クレーンの取扱い
 移動式クレーンの原動機
 エンジンの性能と点検
 油圧装置
 油圧制御弁
 油圧装置の付属機器
 作動油
 電気の基礎知識
 感電と対策
 絶縁/設置/測定機器
 製造検査と使用検査
 移動式クレーンの設置
 検査証と性能検査
 変更届と変更検査
 休止と廃止
 移動式クレーンの使用
 使用禁止の玉掛用具
 移動式クレーンの合図
 自主検査
 移動式クレーンの免許等
移動式クレーンの設置、作業時、終了時、走行時等の留意事項
 移動式クレーンの設置時、作業時、作業終了時、走行時等は、次の事項に留意しなければなりません。
設置時、作業時の留意事項
1. 移動式クレーンを設置する時は、軟弱な地盤によってクレーンが転倒したり、地中の埋設物を破損させたりする恐れがないか確認します。移動式クレーンが送電線に近接している場合は防護管等の感電防止の処置を施し、法肩がある場合は離れた位置に設置します。
2. 移動式クレーンは、作業領域を考慮して設置します。アウトリガは、原則として最大限に張り出します。アウトリガフロートの下には、広くて十分な強度と安定性のある敷板を敷き、機体を水平に設置します。負荷防止装置のアウトリガの設定は、実際の張出幅にセットします。
3. つり荷の質量、形状、数量を確認し、 つり荷の質量に適した段掛数のフックブロックを使用します。フックブロックをクレーンの固定リングから外す時は、アウトリガを張り出してから外します。
4. ジブの長さを作業内容に応じた長さに設定し、定格総荷重等を確認します。
その際、揚程が足らないからといって巻過防止装置の機能を停止させてはなりません。つり荷を最大に巻下げた時は、ドラムに最低2巻以上のワイヤロープが残るように注意します。巻上用ワイヤロープの限度を超えてフックを巻下げると、つり荷が地面に着地する前にドラムにワイヤロープが逆方向に巻き込まれ、再びつり荷が巻上がったり、ドラムからワイヤロープが抜け出たり、ロープ及びロープ固定金具に損傷を与えたりするため、非常に危険です。
5. つり荷を巻上げる時は、フックブロックを荷の重心の真上に位置させ、地切り後に一端停止し、つり荷や玉掛けの状態を確認します。 フック中心の鉛直線とつり荷の重心が一致していない状態で荷を巻上げると、 つり荷が揺れて器物を破損させたり、玉掛作業者を負傷させたりする恐れがあります。
6. つり荷の横引きは、荷が大きく振れる恐れがあります。また、ジブの折損や脱索によるワイヤロープの損傷を招きかねないため、 周囲に人がいなくても横引きは行ってはなりません。ジブの起こし操作による地切り、旋回操作による荷の引き込みも同様です。
7. つり荷を着床させる時は、低速で巻下げ、床から30cm程度の高さに一端停止します。その後、合図者の合図に従ってつり荷を静かに下ろし、着床したところで一端停止し、つり荷のすわり具合を確認してフックを下します。
8. 移動式クレーンによる玉掛用ワイヤロープの引き抜きは、ロープが引っ掛って荷崩れを起こす原因となるため、移動式クレーンを用いて玉掛用ワイヤロープを引き抜きいてはりません。
9. つり荷は、動力降下で降下させます。自由降下(フリーフォール)での降下は、つり荷を落下させる恐れがあります。
作業終了時及び走行時の留意事項
1. 作業を終了した時は、フックブロックは巻上げておく。
2. 箱型構造ジブの移動式クレーンを他の場所に移動させる時は、ジブ、アウトリガを走行姿勢に戻し、旋回装置をロックして移動させます。
3. クローラクレーンを他の場所に移動させる時は、フックブロックが振れないように上部に巻上げ、旋回装置をロックし、ジブを30°〜70°程度に保持し、起動軸側(走行モータ)を後方、遊動軸側を前方にして走行させます。その際、方向転換は緩やかに行い、ジブ等を障害物や電線等に接触させないように走行します。
4. 移動式クレーンを走行させる時は、走行する前にP.T.O(動力取出装置)のスイッチをOFFにします。P.T.Oを入れたまま走行すると、装置を破損させる恐れがあります。
5. ガード下等の地上高さが制限されている場所を通過する時は、制限高さに注意し、ジブ等を接触させないように徐行します。移動式クレーンは、ジブによって視界が良くないため、見通しの悪い所では十分に歩行者や他の車両等に注意しながら徐行します。
6. フットブレーキを使い過ぎるとブレーキディスク等が加熱し、ブレーキの効きが悪くなります。坂道を下る際は、エンジンブレーキとエキゾーストブレーキを併用する等して安全な速度で下ります。 降坂時のエンジンの過回転に注意し、破損の警告を発するオーバーランの警報が鳴った時は直ちに減速し、エンジンの回転を下げげなければなりません。
7. クローラクレーンをトレーラーに積み下ろしをする時は、原則として水平堅土な場所を選び、立入禁止の処置を施し、作業指揮者を定めて作業を行います。クローラクレーンを自走で輸送用トレーラー等に積む時は、荷台後部に専用の登坂用具が装備されているものを使用し、トレーラーにはパーキングブレーキを掛け、タイヤに歯止めします。次にトレーラーの荷台の中心線に積み込むクローラクレーンの中心を合せ、履帯中心線と登坂用具の中心線を一致させます。クローラクレーンは、上部旋回体が旋回しないようにロックし、途中での方向転換は行わずに登坂用具を低速で一気に登ります。登坂用具を登りつめて履帯前部を着地させる時は、静かに着地させます。輸送中に機体が動かないように履帯前後に歯止めを行い、ワイヤロープ等で固定します。
悪天候時の留意事項
 移動式クレーンは、風による力の作用により、安定度、強度及び操作に大きな影響を与えるため、事故につながる恐れがあります。平成4年10月にクレーン等安全規則が改正され、強風時の作業中止について定められました。野外での作業は、天候の影響による移動式クレーンの転倒や荷振れ等の危険防止のため、気象に注意し、危険が予想される時には作業を中止しなければなりません。
1. 移動式クレーンの作業は、10分間の平均風速が10m/s(強風)以上の場合は作業を中止しなければなりません。箱型構造ジブの移動式クレーンは、走行姿勢にして平坦な場所を選んでアウトリガ、駐車ブレーキ、車止めを用いて駐車します。ラチス構造の移動式クレーンは、タワージブを折りたたみ、ジブを地上に倒し、旋回ブレーキを掛けます。平均風速が10m/s以下であっても、風を受ける面積の広いつり荷の作業では、 荷の振れや回転による狭圧、衝突災害の恐れがあるため、強風時の作業は中断する必要があります。
2. ひと降りの雨量が50mm以上の時は、視界は悪く、玉掛作業者の足元が滑りやすくなる等の危険が予測されるため、作業を中止します。 移動式クレーンは、アウトリガの沈下等が起らないように養生し、作業再開時は雨の影響によるクラッチ、ブレーキのライニングの滑りを防止するためにライニングを乾燥させてから作業を行います。雷が接近した時は、ジブへの落雷を避けるために作業を中止し、ジブを走行姿勢にして退避します。
3.
ひと降りの積雪が25cm以上の時は、作業を中止します。 降雪時の作業では、ワイヤロープに付着した雪がシーブの溝に付着し、ワイヤロープがシーブから外れたり、乱巻きなることがあるため、注意する必要があります。
移動式クレーンの風の影響
 移動式クレーンは、構造規格により、平均風速16m/秒の風速に耐えられる構造ですが、つり荷に対する風の影響は考慮されていません。 風による影響は、つり荷の面積が大きいほど、つりり荷の高さが高いほど、ジブの長さが長いほど大きくなります。
 移動式クレーンの受けた風のすべては荷重となり、転倒モーメントとして作用するため、安定度が減少します。風が吹いている時の作業では、定格荷重を少なくする配慮が必要です。
風の性質
1. 風 速
 気象通報の風速は、周囲100m程の間に障害物のない地面上10mにおいて風速計で10分間観測した平均値を用い、毎秒何メートルの風(m/s)と表わしています。風速には、瞬間風速と平均値である平均風速があります。 瞬間風速は、平均風速の1.5〜1.7倍程速い速度です。強風の判断基準には、平均風速が用いられますが、 一般的な測定方法には瞬間風速計が用いられる場合が多く、移動式クレーン作業に関わる風荷重等も瞬間風速で判断するのが実用的と考えられます。風速を車の速度のKm/時で考える場合には、風速を3.6倍にし計算します。
2. 風の吹き方
 風が物体に当たると、風による風圧が生じます。平均風圧は、風速の2乗に比例するため、風速が2倍になると風圧は4倍になります。
3. 局地的突風
 局地的突風は、気候の急変等により局地的に発生する強風で、山間の平地や谷間等が風道となって発生することがあります。
4. ビル風
 ビル風も局地的突風の一種です。高層ビルの周囲で吹く風が南風又は北東の時には、ビルの東側や西側の側面を吹きぬけ、風速が1.4倍〜2.4倍に増速されます。ビル風は、10階以上のビルに現れやすいため、 高層ビル周辺で移動式クレーン等を使用する時にはビル風に注意する必要があります。
5. 台 風
 熱帯低気圧が発達し、最大風速が17m/秒以上になると台風と呼ばれます。台風の中心は気圧が低く、周囲から空気が吹きこんでいます。地球の北半球では、自転の影響で左巻きの渦巻きとなって進みます。 このため、台風の中心より右側では、吹きこむ風に台風の進む力が加わり、風の強さが増大されます。左側は、風の力は弱まります。
6. 旋 風
 西高東低型の気圧配置において、低気圧が発達しながら大陸から北海道東岸を抜ける時に台風なみの暴風が発生することがありますが、この風を旋風といいます。シベリア方面の寒冷な気流と日本付近の温暖な気流が接触すると、重い寒冷気流が軽い温暖気流の下に流れ込み、温暖気流が不連続線に沿って上昇します。この両気流が左回りの旋回流を作り、旋風が発生します。
7. 冬季季節風
 冬季に見られる西高東低型の気圧配置は、日本付近の等圧線が南北に並び、風は高気圧を左に低気圧を右にみて、低気圧側に吹きつけるため、北西風が吹きます。冬季季節風の最大風速は20m/s前後で、広い範囲に吹きつける特徴があります。
高所おける風速の変化
 風速は、地上からの高さが高くなるほど大きくなります。地域的に見ると、平地よりも大都市の方が地上からの高さによる風速の変化は大きくなります。
高さ 風速平均5m/秒 風速平均8m/秒 風速平均10m/秒
海上 平地 市街 都心 海上 平地 市街 都心 海上 平地 市街 都心
10 5.0 5.0 5.0 5.0 8.0 8.0 8.0 8.0 10.0 10.0 10.0 10.0
15 5.3 5.4 5.6 5.8 8.4 8.6 8.9 9.2 10.5 10.7 11.1 11.5
20 5.5 5.6 6.0 6.3 8.7 9.0 9.5 10.1 10.9 11.2 11.9 12.6
25 5.6 5.9 6.3 6.8 9.0 9.4 10.1 10.9 11.2 11.7 12.6 13.6
30 5.8 6.0 6.6 7.2 9.2 9.6 10.6 11.5 11.5 12.0 13.2 14.4
40 6.0 6.3 7.1 8.0 9.5 10.1 11.3 12.7 11.9 12.6 14.1 15.9
50 6.1 6.6 7.5 8.6 9.8 10.5 12.0 13.7 12.2 13.1 15.0 17.1
75 6.5 7.0 8.3 9.8 10.3 11.2 13.2 15.7 12.9 14.0 16.5 19.6
100 6.7 7.4 8.9 11.1 10.6 11.8 14.2 17.8 13.3 14.7 17.8 22.2
125 6.9 7.6 9.4 11.6 11.0 12.2 15.0 18.6 13.7 15.2 18.8 23.2
150 7.0 7.9 9.9 12.4 11.2 12.6 15.8 19.8 14.0 15.7 19.7 24.7
200 7.3 8.3 10.6 13.6 11.6 13.2 16.9 21.7 14.5 16.5 21.1 2
風速換算表(概算)
移動式クレーンのジブの高さは、測定点の地上高さと異なるため、風速換算表を用いて高所における風速を求める。
吹流しによる風速測定
 強風対策は、気象情報に注意して風が強くなる前に移動式クレーンの設置場所や作業に応じた対策を実施することが大切です。 このため、クレーン本体や工事現場に風力計を取付け、風の動向を把握することが望ましのですが、工事期間やクレーンの機種によって取付けが困難な場合があるのが実情です。これらの状況に左右されず、すべての作業員が風速を認識するためには、吹流しを使用する方法が効果的です。
吹流しの状態 風の強さ 風 速
垂れ下がっている 静 風 0〜1.5m/s
垂直から30°傾く 軟 風 1.5〜3.5
垂直から60°傾く 和 風 3.5〜6.0
垂直から80°傾く 疾 風 6.0〜10.0
水平になる 強 風 10.0〜15.0
          日本農業気象学会資料
強風時の措置
 強風時における作業中断等の処置は、様々な条件により異なるため、工事現場に合ったものを定める必要があのります。
1. 現場作業の一時中断
 強風によりクレーン作業を中断する場合は、原則としてクレーン作業を直接担当する作業指揮者が作業内容と風の強さを考慮して決定します。
2. 作業の中止及び再開
 強風により当日のクレーン作業が困難であるかの判断は、作業指揮者が現場責任者と協議を行って決定します。
3. 気象情報に関する情報収集と伝達
 強風等の気象情報の収集と伝達方法を工事事務所毎に定め、 朝礼等によって情報を伝達し、風の影響を受けるクレーン作業について確認します。風速計や吹流しを設置し、工事現場に適した風速換算表や風力階級表の配布、ならびに指導を行います。
風 力 名 称 相当風速(m/s) 陸上における状態
0 静穏 0.3未満 煙がまっすぐ昇る
1 至軽風 0.3〜1.6 煙のたなびきで風向きが分かる
2 軽風 1.6 〜3.4 顔に風を感じる
3 軟風 3.4〜5.5 木の葉や細い小枝が絶えず動く
4 和風 5.5〜8.0 砂ぼこりが立ち、紙片が舞い上がる
5 疾風 8.0〜10.8 葉のあるかん木が揺れ始める
6 雄風 10.8〜13.9 大枝が動き、傘はさしにくい
7 強風 13.9〜17.2 風に向かって歩きにくい
8 疾強風 17.2〜20.8 小枝が折れ、風に向かって歩けない
9 大強風 20.8〜24.5 煙突が倒れ、瓦がはがれる
10 暴風 24.5〜28.5 人家に大損害が起こる
11 激風 28.5〜32.7 滅多に起こらないが広範囲の破壊を伴う
12 颶風 32.7 以上  
備 考
1. 気象庁では、風力を階級で表します。
2. 気象通報でいう風速とは、周囲100m程の間に障害物がない地面上10mで風速計により10分間観測した平均値です。
3. 瞬間風速は、平均風速の1.5〜1.7倍程度早い速度になります。風速8以上が台風と呼ばれます。
つり荷走行
 ラフテレーンクレーンで荷をつって走行することは、原則として禁止されています。やむを得ず荷をつって走行する時は、次の事項を遵守しなければなりません。
1. つり荷走行姿勢の移動式クレーンは、前方、側方、後方の性能が大きく異なります。機体正面に荷がない場合は、アウトリガを一旦張り出すか、クレーンを移動させて機体の正面で荷をつります。
2. タイヤの空気圧を規定圧力にし、かつ、サスペンションロックシリンダを最も縮小した状態にします。
3. ジブを縮小状態にします。(補助ジブは使用禁止)
4. 走行は、できるだけ低速(2Km/h以下)で、直進のみで走行します。移動式クレーンを走行させる時は、旋回ブレーキ、ドラムロック、巻上げレバーロックを掛けます。
5. 走行する地盤が水平で、タイヤの接地圧に耐えられることを確認します。地盤が軟弱な場合や傾斜又は凸凹がある場合は、つり荷走行は行ってはなりません。
6. メーカが示すつり荷走行の前方領域のジブ角度や定格総荷重は、水平堅土において使用した時の数値であるため、つり荷の質量は前方領域のジブ角度を超えないような余裕のある荷重でなければなりません。
7. つり荷は、地切り程度の高さを保持し、添えロープ等で荷を機体側に引き寄せるかフロントバンパで支える等して荷振れを起こさないようにします。
8. アウトリガを有するものは、アウトリガを張出し、アウトリガフロートを地上から少し上げた状態で走行します。
9. 急ハンドル、急発進、急ブレーキ、変速操作、つり荷走行中のクレーン操作、つり荷の自由降下等は行ってはなりません。
共つり作業
 複数の移動式クレーンを用いて1つの荷をつる共つり作業は、原則として禁止されています。やむを得ずに共つり作業を行う場合は、危険を伴う作業であることから一定の条件の元、作業指揮者の直接指揮により行います。共つり作業は、計画及び作業手順を作成し、事前に工事関係者と作業手順、つり方について十分に打ち合わせを行い、作業者に周知徹底させます。共つり作業に使用する移動式クレーンは、なるべく同一機種、同一性能、つり荷に対して十分に余裕のある能力のものを使用します。 適切な配置によって、極力、巻上げのみで作業が完了する方法を用い、定められた合図者の合図に従って慎重に運転します。