油圧装置の付属機器には、作動油タンク、アキュムレータ、配管、継手、シール等があります。
作動油タンクは、作動油を貯蔵して油圧回路に油を供給するための容器である。作動油タンクには、エアブリーザ、油面計、フィルタ等の付属品を取付け、エアブリーザ以外は空気が出入りできないように接合面をパッキンやガスケット等を用いて気密性を高めている。吸入フィルタと戻しパイプが接近していると、戻ってきた作動油がタンク内を循環せず、そのまま油圧回路に送り出されるため、タンク内に隔板を設けている。
エアブリーザは、作動油タンクの上部に取付け、タンク内の油面の上下に伴ってタンクに進入する空気をろ過し、作動油にゴミ等が入らないようにするものである。また、作動油の給油口としても使用されている。
油面計は、作動油タンク内の作動油の量を点検できるように、タンク側面に取付けられている。油量の点検は、移動式クレーンを走行状態(全縮状態)にして、作動油の油面が油面計の上限(H)と下限(L)の間にあることを確認する。
フィルタは、油圧回路を流れる作動油に含まれているごみや金属粉等の異物をろ過して取り除き、油圧装置を保護するもので、ポンプ吸込側に取付ける吸込用フィルタと、ポンプ吐出側に取付けるラインフィルタ(管路用フィルタ)がある。
作動油の油温が55〜60度以上になると、種々な障害が起きる。このため、作動油を強制的に冷却する装置としてクーラを使用している移動式クレーンがある。
圧力計は、油圧回路内の圧力を計る装置で、一般的にブルドン管式圧力計が用いられている。
アキュムレータ(蓄圧器)は、気体が油圧によって圧縮される性質を利用している。密閉されたシェル内をプラダによって窒素ガスを封入した室と油室の2つに分け、ガス室に窒素ガスを封入することで、窒素ガスの圧縮性で圧油を貯蔵することができる。アキュムレータの圧油は、必要に応じて窒素ガスの圧縮圧力によって放出されて次のような働きを行う。
アキュムレータには、アンロード弁(油圧制御弁のアンロード弁を参照)を使用している。アンロード弁には、アキュムレータが設定圧に達した時に油圧ポンプの圧油をそのまま作動油タンクに逃がす働きがあり、これによりエンジンの負荷を軽減している。
● アキュムレータの働き
1. 作動油に生じる衝撃圧( 油撃 )の吸収
2. 圧油の脈動の減衰
3. 油圧ポンプ停止時の油圧源
管は、油圧装置へ作動油を流す流路として用いられるもので、鋼管、ステンレス鋼管、高圧用ゴムホース等がある。移動式クレーンは、一般に鋼管や高圧用ゴムホースを使用している。ステンレス鋼管は、管の厚さを薄くしたり、質量を制限する場合に用いられている。高圧用ゴムホースは、ゴムの特質である柔軟性を生かし、鋼管での配管が難しい場所や移動する装置に接続する場合に用いられている。配管類は、ホースの接触による擦れ、ねじれ、変形、傷の有無に注意し、接続部の緩みや油漏れをチェックする必要がある。配管を取外した時は、配管内の空気を十分に抜き、ポンプの焼付きを起こさないようにしなければならない。
継手には、ねじ継手、フレア管継手、フレアレス管継手、回転継手等がある。
ねじ継手には、ネジが切られ、そのネジをねじ込んでシール(密封)する。
フレアには、広げた部分という意味がある。フレア管継手は、管の先端をラッパ状に広げたフレア部を継手本体のナット側テーパ部にねじで締め上げ、押し付けてシールする。
フレアレス管継手(くい込み継手)は、管に取付けたスリーブをナットで締め上げ、その先端を管にリング状にくい込ませてシールする。
移動式クレーンの旋回により、上部旋回体と下部走行体をつなぐ配管がねじれないようにするために回転継手が用いられている。回転継手は、スピンドルとボディで構成され、スピンドルには配管の数だけ円周上に溝を切っている。スピンドルを移動式クレーンのキャリア側に取付け、ボディは旋回体と一緒に旋回する構造である。回転継手は、クラッチ回路にも使用されている。
シールは、油圧機器の油漏れ、ゴミや水分等の浸入を防止するために用いられている。シールの老化や取付部分の緩みは、シールを破損させ、作動油の漏れ、圧力低下、作動の不確実を起こす原因となるため、不良の場合は交換する必要がある。
綿布や石綿織布にゴムを含ませて成形したもの、あるいは合成ゴム又は皮を成形したもので、断面の形状にはV形、U形、L形等があり、回転軸部に用いられている。
合成ゴムを成形したもので、丸形断面(リング状)のものが広く使用されている。移動式クレーンの固定部分や周動部分に用いられているが、中速回転以上の場所には適さない。
合成ゴムを成形したコの字形の断面をしたもので、回転部分や周動部分に用いられている。
板状のシールで、石綿、合成ゴム、金属等の様々な材質がある。移動式クレーンでは、容器の蓋の合せ目等の密封に用いられている。
テープ状になったシールで、油漏れする箇所に巻きつけて用いる。テープを巻く方向は、右ねじの場合は右巻きに巻き付ける。