移動式クレーンの使用

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  つり上げ荷重が0.5t以上3t未満の移動式クレーンは、労働安全規則第27条において、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備したものでなければ、使用してはならないと定められています。


使用の制限

 事業者は、移動式クレーンについては、厚生労働大臣の定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に適合するものでなければ使用してはならない。
                               クレーン等安全規則第64条

検査証の備付け

 つり上げ荷重が3t以上の移動式クレーンを用いて作業を行う時は、当該移動式クレーンに移動式クレーン検査証を備え付けておかなければならない。
                              クレーン等安全規則第63条

設計の基準とされた負荷条件

 事業者は、移動式クレーンを使用する時は、当該移動式クレーンの構造部分を構成する鋼材等の変形、折損を防止するため、当該移動式クレーンの設計の基準とされた負荷条件荷に留意するものとする。
                            クレーン等安全規則第64条の2
 本条は、構造部分を構成する鋼材等(鋼材の接合部及びリベット部を含む。)の疲労破壊を防止するため、設計の基準とされた負荷条件を超えて移動式クレーンを使用しないよう留意することについて規定したものである。設計の基準とされた荷重を受ける回数及び常態としてつる荷の重さは、クレーンの耐用期間中に受ける荷重の回数や定格荷重に対して実際につられる荷の重さをいうもので、クレーン等構造規格に定められている。

巻過防止装置の調整

 事業者は、移動式クレーンの巻過防止装置については、フック、グラブバケット等のつり具の上面又はつり具の巻上用シーブの上面とドラム、シーブ、トロリフレームその他当該上面が接触する恐れのある物(傾斜したジブを除く。)の下面との間隔が0.25m以上(直働式の巻過防止装置にあっては0.05m以上)となるように調整しておかなければならない。
                              クレーン等安全規則第65条

安全弁の調整

 事業者は、水圧又は油圧を動力として用いる移動式クレーンの当該水圧又は油圧の過度の昇圧を防止するための安全弁については、最大の定格荷重に相当する荷重を掛けた時の水圧又は油圧に相当する圧力以下で作用するように調整しておかなければならない。ただし、第62条(荷重試験)の規定により、荷重試験又は安定度試験を行う場合において、これらの場合における水圧又は油圧に相当する圧力で作用するように調整する時は、この限りでない。
                              クレーン等安全規則第66条
 本条は、つり上げ装置、ジブの起伏装置及び伸縮装置等の動力として油圧を用いる移動式クレーンの安全弁の吹出圧力の調整について規定したものである。

作業の方法等の決定等

 事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行う時は、移動式クレーンの転倒等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の質量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して、次の事項を定めなければならない。
1. 移動式クレーンによる作業の方法
2. 移動式クレーンの転倒を防止するための方法
3. 移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統
事業者は、当該次項について、作業の開始前に、関係労働者に周知させなければならない。
                            クレーン等安全規則第66条の2
 移動式クレーンの転倒等の「等」には、移動式クレーンの上部旋回体による挟まれ、荷の落下、架空電線の充電電路による感電等が含まれる。移動式クレーンによる作業の方法とは、移動式クレーンの設置位置、一度につり上げる荷の質量、積み降ろしの位置、玉掛けの方法等をいう。転倒を防止するための方法とは、地盤の状況に応じた鉄板の敷設、アウトリガの張り出し及び位置等をいう。労働者の配置を定めるとは、作業の指揮、玉掛け、合図等を行う者を定め、作業場所ならびに立入禁止区域を定めることをいう。

外れ止め装置の使用

 事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げる時は、外れ止め装置を使用しなければならない。
                             クレーン等安全規則第66条の3
外れ止め装置とは、玉掛用ワイヤロープ等のフックからの外れを防止するための装置をいう。

過負荷の制限

事業者は、移動式クレーンに定格荷重を超える荷重を掛けて使用してはならない。
                               クレーン等安全規則第69条
 本条は、如何なる場合も移動式クレーンに定格荷重を超える荷重を掛けて使用してはならないと規定したものである。ただし、荷重試験を行う場合を除く。

傾斜角の制限

 事業者は、移動式クレーンについては、移動式クレーン明細書に記載されているジブの傾斜角(つり上げ荷重が3t未満の移動式クレーンにあっては、これを製造した者が指定したジブの傾斜角)の範囲を超えて使用してはならない。
                              クレーン等安全規則第70条
 移動式クレーンのジブは、傾斜角が小さくなるほど定格荷重が小さくなる。定格荷重が小さくなると、過負荷により移動式クレーンの倒壊を招く恐れがあるため、定められた傾斜角を超えて移動式クレーンを使用してはならない。つり上げ荷重が3t未満の移動式クレーンの傾斜角は、仕様書や説明書に記載されている。

定格荷重の表示等

 事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行う時は、移動式クレーンの運転者及び玉掛けを行う者が当該移動式クレーンの定格荷重を常時知ることができるよう、表示その他の措置を講じなければならない。
                            クレーン等安全規則第70条の2
 本条は、移動式クレーンの運転者及び玉掛けを行う者が定格荷重を常時知ることができる表示を行うことについて規定したもので、ジブの下部又は運転室のドア付近等に定格荷重を表示する等の措置をいう。その他の措置とは、移動式クレーンの運転士及び玉掛けを行う者が定格荷重の表示を同時に見ることができない構造の移動式クレーンにあっては、ジブの最大作業半径の定格荷重を適当な位置に表示すると共に、ジブの作業半径に応じた定格荷重表を運転室に備え、かつ、同表を玉掛けに従事する者に携帯させる等の措置をいう。

使用の禁止

 事業者は、地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に存する工作物が損壊する恐れがあること等により、移動式クレーンが転倒する恐れのある場所において、移動式クレーンを用いて作業を行ってはならない。ただし、当該場所において、移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置している時はこの限りでない。
                            クレーン等安全規則第70条の3
 本条は、軟弱な地盤等により、移動式クレーンが転倒する恐れのある場所での移動式クレーンを用いた作業を禁止したものである。工作物が損壊する恐れがあること等の「等」には、法肩の崩壊が含まれる。必要な広さ及び強度を有するとは、地盤の状況、地下に存する工作物の状況に応じ、沈下しない広さを有する、かつ、アウトリガに加わる荷重によって変形を生じない強度を有することをいう。

アウトリガの位置

 事業者は、アウトリガを使用する移動式クレーンを用いて作業を行う時は、当該アウトリガを当該鉄板等の上で、当該移動式クレーンが転倒する恐れのない位置にアウトリガを設置しなければならない。
                            クレーン等安全規則第70条の4
 本条は、 鉄板を敷設した上に移動式クレーンを設置する時は、移動式クレーンが転倒する恐れのない位置に設置しなけばならないと規定している。 転倒する恐れのない位置とは、鉄板等の中央部分をいうものである。

アウトリガ等の張り出し

 事業者は、アウトリガを有する移動式クレーン又は拡幅式のクローラを有する移動式クレーンを用いて作業を行う時は、当該アウトリガ又はクローラを最大限に張り出さなければならない。ただし、アウトリガ又はクローラを最大限に張り出すことができない場合であって、当該移動式クレーンに掛ける荷重が当該移動式クレーンのアウトリガ又はクローラの張出幅に応じた定格荷重を確実に下回ると見込まれる時は、この限りでない。
                            クレーン等安全規則第70条の5

搭乗の制限

 事業者は、移動式クレーンにより、労働者を運搬又は労働者をつり上げて作業させてはならない。作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、移動式クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設けて当該搭乗設備に労働者を乗せることができる。搭乗設備については、墜落による労働者の危険を防止するため、次の次項を行わなければならない。
1. 搭乗設備の転位及び脱落を防止する措置を講じること。
2. 労働者に要求性能墜落制止用器具等その他の命綱を使用させること。
3. 搭乗設備と搭乗者の総重量の1.3倍に相当する質量に500kgを加えた値が、当該移動式クレー
 ンの定格荷重を超えないこと。
4. 搭乗設備を下降させる時は、動力降下の方法によること。
労働者は、要求性能墜落制止用器具等の使用を命じられた時は、これを使用しなければならない。
                          クレーン等安全規則第72条、第73条
 作業の性質上やむを得ない場合とは、短期間で終了する小規模な臨時的な作業、代替の方法が確立されていない作業をいう。安全な作業の遂行上必要な場合とは、移動式クレーンを使用することによって、より安全な作業の逐行が期待できる場合をいう。搭乗設備の転位及び脱落を防止する措置とは偏心荷重等による搭乗設備の傾き防止及びつり具への外れ止めの取付け等をいう。要求性能墜落制止用器具等とは、墜落による危険性に応じた性能を有する安全帯等をいう。

労働者の立入禁止

 事業者は、移動式クレーンに係る作業を行う時は、当該移動式クレーンの上部旋回体と接触することにより、労働者に危険が生ずる恐れのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
                              クレーン等安全規則第74条

り荷の下への立入禁止

 事業者は、移動式クレーンに係る作業を行う場合であって、次の各号のいずれかに該当する時は、つり上げられている荷(6 の場合にあっては、つり具を含む。)の下に労働者を立ち入らせてはならない。
1. ハッカーを用いて玉掛けをした荷がつり上げられている時。
2. つりクランプ1個を用いて玉掛けをした荷がつり上げられている時。
3. ワイヤロープ等を用いて1箇所に玉掛けをした荷がつり上げられている時。ただし、荷に設
 けられた穴又はアイボルトにワイヤロープ等を通して玉掛けをしている場合を除く。
4. 複数の荷が一度につり上げられている場合で、その複数の荷が結束され、箱に入れられる等
 の固定をされていない時。
5. 磁力又は陰圧により吸着させるつり具又は玉掛用具を用いて玉掛けをした荷がつり上げられ
 ている時。
6. 動力降下以外の方法によって荷又はつり具を下降させる時。
                            クレーン等安全規則第74条の2
  移動式クレーンの作業では、原則として労働者をつり荷の下に立ち入らせないようにしなければならないが、つり荷の下にやむを得ず立ち入らなければならない場合もある。本条は、如何なる場合であっても、労働者の立入りを認めないものについて規定したものである。つり上げられている荷の下には、荷の直下及び荷の振れや回転する恐れのある直下が含まれる。ハッカーは、先端が爪の形をしたもので、荷の端に爪を引っ掛けて使用する。動力降下以外の方法とは、自由降下による方法いうものである。

              
            ハッカー                       アイボルト
           
     横吊クランプ    縦吊クランプ

強風時の作業中止

 事業者は、強風のため移動式クレーンに係る作業の実施について危険が予想される時は、当該作業を中止しなければならない。
                           クレーン等安全規則第74条第3項
 強風とは、10分間の平均風速が10m/s以上の風をいう。移動式クレーンに係る作業に危険が予想される時とは、風の影響によってつり荷に振れや回転が起こり、労働者に危険を及ぼす恐れがある時、定格荷重の荷をつり上げる作業中に荷の作業半径が風圧で増大し、定格荷重を超える荷重が掛かる恐れがある時をいう。移動式クレーンは、機体の構造や荷の形状によって風の影響による危険度が異なるため、個々の作業によって適切な判断を下すことが大切である。

強風時における損壊の防止

 事業者は、作業を中止した場合であって移動式クレーンが転倒する恐れのある時は、当該移動式クレーンのジブの位置を固定させる等により、移動式クレーンの転倒による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
                           クレーン等安全規則第74条第4項
 本条は、移動式クレーンが転倒する恐れのある時の労働者の危険を防止するための措置について規定したものである。労働者の危険を防止するための措置には、移動式クレーンのジブを堅固な物に固定させること、ジブを収納することの他、移動式クレーンの転倒により危険が及ぶ恐れのある範囲内を立入禁止とする措置が含まれる。

運転位置からの離脱の禁止

 事業者は、移動式クレーンの運転者を荷をつったままで運転位置から離れさせてはならない。移動式クレーンの運転士は、荷をつったままで運転位置から離れてはならない。
                             クレーン等安全規則第32条

ジブの組立て等の作業

事業者は、移動式クレーンのジブの組立て又は解体の作業を行う時は、次の措置を講じなければならない。
1. 作業を指揮する者を選任して、その者の指揮のもとに作業を実施させること。
2. 作業を行う区域に関係労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やす
 い箇所に表示すること。
3. 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想される時は、当該作業
 に労働者を従事させないこと。
事業者は、作業を指揮する者に次の事項を行わせなければならない。
1. 作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業を指揮すること。
2. 材料の欠点の有無並びに器具及び工具の機能を点検し、不良品を取り除くこと。
3. 作業中、要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。
                            クレーン等安全規則第75条の2
 ジブの組立て又は解体の作業には、移動式クレーンに常時備えられている補助ジブを主ジブに着脱させる作業は含まれない。作業を行う区域の関係労働者とは、当該作業に従事する労働者、当該作業のための材料の運搬又は整理を行う労働者、作業の指示又は連絡等にあたる労働者をいう。

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