製造検査 / 使用検査

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 クレーン、デリック、移動式クレーンは、労働安全衛生法により特に危険な作業を行う特定機械に定められています。特定機械に定められたものを製造する場合は、所轄都道府県労働局長の製造許可を受けなければなりません。


特定機械

 次の表に挙げる機械装置は、労働安全衛生法で特に危険な作業を行う特定機械に定められている。特定機械は、製造段階での安全を確保するため、厚生労働大臣の定める基準(クレーン等構造規格)に適合していると認められる場合のみ製造が許可される。
 クレーン等構造規格は、クレーン等の製造段階での構造の欠陥や装置の不備から生じる災害を防止するために設けられたもので、クレーンの構造規格をクレーン構造規格、デリックの構造規格をデリック構造規格、移動式クレーンの構造規格を移動式クレーン構造規格といい、これらを総称してクレーン等構造規格という。

特定機械の種類 製造許可を必要とするもの
クレーン つり上げ荷重が3t以上のもの
(スタッカークレーンはつり上げ荷重が1t以上のもの)
デリック つり上げ荷重が2t以上のもの
移動式クレーン つり上げ荷重が3t以上のもの
建設用リフト ガイドレールの高さが18m以上のもの
(積載荷重0.25t未満は除く)
エレベーター 積載荷重が1t以上のもの
ボイラー 小形ボイラーは除く
第1種圧力容器 小形圧力容器は除く
ゴンドラ つり足場の作業床が専用の昇降装置で上昇又は下降する設備

各種検査及び手続き

 つり上げ荷重が3t以上の移動式ク レーンの製造、使用、廃止に至るまでの各種検査や手続きは、次のような流れで行われている。製造検査検査は所轄都道府県労働局長、使用検査は都道府県労働局長が行う。また、設置報告書は、所轄労働基準監督署長に提出する等、検査や申請の内容によって検査する者や申請先が異なっている。

    
申請者 申請内容 申請先 申請書類
製造者 製造許可 所轄都道府県労働局長
(所在地を管轄する
  都道府県労働局長)
製造許可申請書
製造検査 製造検査申請書
輸入業者 使用検査 都道府県労働局長 使用検査申請書
事業者 設置報告 所轄労働基準監督署長 設置報告書
変  更 変更届
変更検査 変更検査申請書
休  止 休止報告書
使用再開 使用再開検査申請書
廃止又は3t未満に変更 廃止報告書
検査証の滅失及び損傷 検査証再交付申請書
設置者の異動 検査証書換申請証
事故報告 事故報告書
性能検査 登録性能検査機関 性能検査申請書
免許取得者 免許証の滅失 都道府県労働局長 免許証再交付申請書
免許証の損傷 免許証書替申請書
免許の取消し又は停止 免許証の返還
移動式クレーンのつりあげ荷重 製造許可 設置報告 保守の義務
つりあげ荷重3t以上
つりあげ荷重3t未満

製造許可

 つり上げ荷重が3t 以上の移動式クレーンを製造しようとする者は、その製造しようとする移動式クレーンについて、あらかじめ、所轄都道府県労働局長の許可を受けなければならない。ただし、既に当該許可を受けている移動式クレーンと形式が同一である移動式クレーン((許可形式クレーンという。)については、この限りでない。
 つり上げ荷重が3t 以上の移動式クレーンの許可を受けようとする者は、移動式クレーン製造許可申請書に移動式クレーンの組立図及び次の事項を記載した書面を添えて、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。
1. 強度計算の基準
2. 製造の過程において行う検査のための設備の概要
3. 主任設計者及び工作責任者の氏名及び経歴の概要
                              クレーン等安全規則第53条
 形式が同一とは、製造許可を受けた移動式クレーンの種類、構造部分の材料、構造部分の形状、能力及び工作方法が許可を受けている移動式クレーンと同一のものをいう。たとえば、つり上げ荷重が3t以上の同じ形式の移動式クレーンを10台製造しようとする場合、その1 台分について製造許可を受ければよく、他の9台については製造許可を得る必要がない。また、巻上装置、走行装置、旋回装置、ブレーキ、制御器、車輪、フック等の各部分の装置や部品のみの製作は、移動式クレーンの製造に該当しない。なお、つり上げ荷重が3t未満の移動式クレーン等を製造する場合は、製造許可を受ける必要はない。

検査設備等の変更報告

 製造許可を受けた者は、当該許可に係る移動式クレーン又は許可形式移動式クレーンを製造する場合において、製造の過程において行う検査のための設備又は主任設計者もしくは工作責任者を変更した時は、遅滞なく、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。
                              クレーン等安全規則第54条

製造検査

 つり上げ荷重が3t以上の移動式クレーンを製造した者は、当該移動式クレーンについて、所轄都道府県労働局長の検査を受けなければならない。製造検査においては、移動式クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行う他、荷重試験及び安定度試験を行うものとする。製造検査を受けようとする者は、移動式クレーン製造検査申請書に移動式クレーン明細書、移動式クレーンの組立図及び構造部分の強度計算書を添えて所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。この場合において、当該検査を受けようとする移動式クレーンが既に製造検査に合格している移動式クレーンと寸法及びつり上げ荷重が同一である時は、組立図及び強度計算書の添付を省略することができる。所轄都道府県労働局長は、製造検査に合格した移動式クレ
ーンに刻印を押し、かつ、その移動式クレーン明細書に製造検査済の印を押して申請書を提出した者に交付するものとする。
                    クレーン等安全規則第55条第1項第2項第5項第6項

 ● 荷重試験

 移動式クレーンに定格荷重の1.25倍に相当する荷重(定格荷重が200tを超える場合は、定格荷重に50tを加えた荷重)の荷をつって、つり上げ、旋回、走行等の作動を行うものとする。
                           クレーン等安全規則第55条第3項

 ● 安定度試験

 移動式クレーンに定格荷重の1.27倍に相当する荷重の荷をつって、当該移動式クレーンの安定に関し最も不利な条件で地切りすることにより行うものとする。
                            クレーン等安全規則第55条第4項

 ● 製造検査を受ける場合の措置

 製造検査を受ける者は、当該検査を受ける移動式クレーンについて、次の事項を行わなくてはならない。
1. 検査しやすい位置に移すこと。
2. 荷重試験及び安定度試験のための荷及び玉掛用具を準備すること。
3. 製造検査を受ける者は、当該検査に立ち会わなければならない。所轄都道府県労働局長は、
 製造検査に必要があると認める時は、当該検査に係る移動式
クレーンについて、次の事項を当該検査を受ける者に命ずることができる。
1. 安全装置を分解すること。
2. 塗装の一部を剥がすこと。
3. リベットを抜き出し、又は部材の一部に穴を開けること。
4. ワイヤロープの一部を切断すること。
5. 当該検査のために必要と認められる事項。
                              クレーン等安全規則第56条

使用検査

次の者は、当該移動式クレーンについて、都道府県労働局長の検査を受けなければならない。
1. 移動式クレーンを輸入した者。
2. 製造検査又は使用検査を受けた後、設置しないで2年以上(設置しない期間の保存状態が良
 好であると都道府県労働局長が認めた移動式クレーンについては3 年以上)経過した移動式
 クレーンを設置しようとする者。
3. 使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、又は使用しようとする者。使用検査を受けよ
 うとする者は、移動式クレーン使用検査申請書に移動式クレーン明細書、移動式クレーンの
 組立図及び強度計算書を添えて、都道府県労働局長に提出しなければならない。所轄都道府
 県労働局長は、使用検査に合格した移動式クレーンに刻印を押し、かつ、その移動式クレー
 ン明細書に使用検査済の印を押して申請書を提出した者に交付するものとする。
                      クレーン等安全規則第57条第1項第4項第6項

 ● 使用検査

第55条第2項から第4項までの規定は、使用検査について準用する。
                           クレーン等安全規則第57条第3項
 使用検査では、製造検査と同様の検査を実施する。したがって、移動式クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行う他、荷重試験及び安定度試験を行う。

 ● 輸入前の使用検査

 外国において移動式クレーンを製造した者は、当該移動式クレーンについて、都道府県労働局長の検査を受けることができる。移動式クレーンを輸入し、又は外国において製造した者が使用検査を受けようとする時は、移動式クレーン使用検査申請書に当該検査に係る移動式クレ
ーンの構造が厚生労働大臣の定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有する者に限る。)が明らかにする書面を添付することができる。
                         クレーン等安全規則第57条第2項第5項
 57条第1項は、日本国内に輸入した外国製の移動式クレーンについて、使用検査を受けなければならないと規定したものである。この第2項は、国外製造の移動式クレーンを日本国内に輸入する場合、輸出する前段階において、使用検査を受けることができると規定している。国外で当該検査を受けて合格した移動式クレーンは、本国内での使用検査が免除される。

 ● 使用検査を受ける場合の措置

 第56条の規定は、使用検査を受ける場合について準用する。この場合において、同条第2項の中「所轄都道府県労働局長」とあるのは、「都道府県労働局長」と読み替えるものとする。
                              クレーン等安全規則第58条
使用検査を受ける場合の措置には、製造検査を受ける場合の措置と同様の規定が準用される。

移動式クレーン検査証

 所轄都道府県労働局長又は都道府県労働局長は、それぞれ製造検査又は使用検査に合格した移動式クレーンについて、それぞれ申請書を提出した者に対し、移動式クレーン検査証を交付するものとする。
                           クレーン等安全規則第59条第1項
 移動式クレーン検査証の有効期間は、2年とする。ただし、製造検査又は使用検査の結果により当該期間を2年未満とすることができる。製造検査又は使用検査を受けた後、設置されていない移動式クレーンであって、その間の保管状況が良好であると都道府県労働基準局長が認めたものについては、当該移動式クレーン検査証の有効期間を製造検査又は使用検査の日から起算して3年を超えず、かつ、移動式クレーンを設置した日から起算して2年を超えない範囲内で延長することができる。
                              クレーン等安全規則第60条
 有効期間の起算日とは、製造検査又は使用検査に合格した日で、移動式クレーン明細書に押印された検査済印の日付である。

 ● 検査証の滅失し又は損傷

 移動式クレーンを設置している者は、移動式クレーン検査証を滅失し又は損傷した時は、移動式クレーン検査証再交付申請書に次の書面を添えて所轄労働基準監督署長を経由し移動式クレーン検査証の交付を受けた都道府県労働基準局長に提出し再交付を受けなければならない。
1. 移動式クレーン検査証を滅失した時は、その旨を明らかにする書面
2. 移動式クレーン検査証を損傷した時は、当該移動式クレーン検査証
                           クレーン等安全規則第59条第2項

 ● 設置者の異動

 移動式クレーンを設置している者に異動があった時は、移動式クレーンを設置している者は当該異動後10日以内に、移動式クレーン検査証書替申請書に移動式クレーン検査証を添えて、所轄労働基準監督署長を経由し、移動式クレーン検査証の交付を受けた都道府県労働基準局長に提出し、書替えを受けなければならない。
                           クレーン等安全規則第59条第3項

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