地盤と作業領域

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 移動式クレーンを設置する時は、機体及びつり荷の質量によってアウトリガが沈下しないように土の性質や地盤の強度(地耐力) を確認しなければなりません。




土質と強度

 土の種類は、粒子の粒の大きさで区別される。土の性質は粒子の種類の混じり合う割合で決まり、これにより地盤の強度が変わる。砂の粒子は直径が2.0mm〜0.05mm、粘土は0.005mm
以下、その中間の0.05mm〜0.005mmの粒子のものはシルトという。砂質土、砂質シルト、砂と砂利が混ざった砂利質土等は強度が弱く、移動式クレーンの走行や設置には不向きである。
 地盤には、重いものに耐えられる地盤もあれば、軽いものにしか耐えられない地盤もある。このため、建設工事では地盤の強度をあらかじめ調査している。土質や強度を調べる方法の一つとして、標準貫入試験がある。標準貫入試験は、質量63.5kgのハンマーを75cmの高さから自由降下させ、貫入試験器のサンプラを30cm打ち込むのに要した打撃数によって判別する。その他に、100kgのおもりの付いたロッド先端にスクリュー状のものを取付け、ハンドルを回転させながら地中にねじ込み、貫入の抵抗値によって地盤の土質や強度を判別するサウンディング判別法等が用いられている。

             
            標準貫入試験             サウンディング判別法

 ● 地耐力

 地盤の強度を地盤支持力又は地耐力といい、極限の支持力に対しての安全率を考慮した強度を許容支持力という。地盤の許容支持力は、標準貫入試験等による地耐力試験により、その位置における地盤の固さと締まり具合の目安となる数値であるN値を求める。この値が大きいほど、強度がある。強度は、一般に土の種類や性質と共に示されている。
 移動式クレーンの設置では、許容支持力を前もって調査していないことが多い。地盤の強度を簡易に判定する方法には、人が歩いた足跡のくぼみ、移動式クレーン等が走行したタイヤ跡の深さ、鉄筋等を土中に差し込んだ時の抵抗によって判断を下す方法等がある。地盤の補強には、地盤の地固め等の地盤改良によって地盤支持力を上げる方法や、敷材や鉄板等を敷きつめ移動式クレーンの荷重を分散する方法等が用いられている。移動式クレーンは、地盤の強度不足や埋設物の破損等により、機体が転倒する恐れがある箇所では作業を行ってはならないと規定されている。このような条件下では、転倒を防止するため、必要な広さの敷板、敷角、 鉄板等を敷設した上に機体を設置する場合に限ってクレーンの使用が許されている。

     

アウトリガ等の張り出し

 アウトリガ又は拡幅式のクローラを有する移動式クレーンを用いて作業を行う時は、アウトリガ又はクローラを最大限に張り出さなくてはならない。ただし、最大限に張り出すことができない場合で、移動式クレーンに掛ける荷重が張出幅に応じた定格荷重を確実に下回ると見込まれる時を除く。
● 張出幅に応じた定格荷重を確実に下回ると見込まれる時とは!
 1. アウトリガの張出幅に応じて、自動的に定格荷重が設定される過負荷防止装置を備えた移
  動式クレーンを使用する時。
 2. アウトリガの張出幅を入力する過負荷防止装置を備えた移動式クレーンにおいて、実際の
  張出幅と同じ又は小さい張出幅にセットして作業を行う時。
 3. 移動式クレーン明細書、取扱説明書等にアウトリガの最大張り出しでない時の定格荷重が
  示されており、実際の張出幅と同じ又は小さい時の定格荷重表又は性能曲線により、移動
  式クレーンにその定格荷重を超える荷重が掛かることがないことを確認した時。

アウトリガフロート一脚に掛かる荷重

 アウトリガの各フロートは、機体の総質量とつり荷の質量を合計した質量を分担して支えている。この支持する力をアウトリガ反力という。各アウトリガフロートに加わる荷重は、ジブの旋回する方向によって変化している。ジブを旋回させると、ジブが向いた側のアウトリガフロート一脚に70〜80%に相当する荷重の最大反力が掛かる。アウトリガフロートには、小さな面に大きな力が加わらないように十分な強度と安定性のある敷板等を敷いて荷重を分散させ、地盤の沈下やクレーンの転倒を招かないように注意しなくてはならない。
● アウトリガ1脚に掛かる最大反力値(kN)の目安
 (機体質量+つり荷の質量)×重力加速度(9.8)×0.7〜0.8

   

作業領域

 移動式クレーンは、作業領域(前方、側方、後方)によって機体の安定度(つり上げ性能)が異なるため、作業領域をよく理解した上で運転しなければならない。また、つり荷側のアウトリガの張出幅が小さい場合は、転倒支点が最大張出時よりも機体側に寄るため、機体側の安定モーメントは小さくなり、つり荷側の転倒モーメントは大きくなる。 このため、同じ荷重の荷を最大張出側から旋回させた場合、アウトリガの張出幅の小さい方向では過荷重となり、機体を転倒させる恐れがある。
● トラッククレーンの作業領域
  トラッククレーンの安定度は後方、側方、前方の順で高く、前方領域のつり上げ性能は後
 方、側方領域の定格総荷重の21%〜54%になる。このため、前方領域のつり上げ性能を側方
 後方領域と同一にするため、トラッククレーンの多くはフロントジャッキを装備している。
● ラフテレーンクレーンの作業領域
  ラフテレーンクレーンのアウトリガ張出幅が最大の場合、全周(360°)を同一の定格総荷
 重に設  定している。厳密には、前方、側方、後方の順でつり上げ性能が高いが、その最
 小の値を同一の性能としている。
● クローラクレーンの作業領域
  クローラクレーンは、ジブ長さと作業半径に応じて全周(360°)が同一の定格総荷重に設
 定されている。

      

鉄板による地盤の補強

 地盤の支持力は、地盤に掛かる最大の荷重(最大反力)に耐えられるものでなければならない。アウトリガフロート一脚には、荷重が集中するため、鉄板等を使って養生を行う。地盤を補強するための鉄板は、22mm以上の厚みのあるものを使用し、鉄板同士に隙間がないようにする。

 ● クローラクレーンの鉄板の敷き方

 クローラクレーンの接地圧は、ジブの旋回する方向によって変化する。このため、地盤はクローラ幅よりも広く養生しなくてはならない。クローラクレーンの鉄板の敷き方には、隙間がないように整然と並べるシングル敷きと、その上に鉄板を直角に重ねるダブル敷きがある。
1. シングル敷き(鉄板の長手方向が走行方向と直角に交わるように敷く)
2. ダブル敷き (上下の鉄板が直角に交わるように敷く。)

      
            シングル敷き              ダブル敷き 

 ● トラッククレーン及びラフテレーンクレーンの鉄板の敷き方

 トラッククレーンやラフテレーンクレーンに敷く鉄板は、基本的にはクローラクレーンと同じだが、アウトリガフロートが鉄板の中央にくるようにする。

         
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