SI単位
 力に関する事項
 力のモーメント
 力のつり合い
 物体の質量と比重
 物体の重心
 物体の安定
 物体の運動と速度
 摩擦力と摩擦の法則
 慣性と遠心力
 荷重と応力
 ワイヤロープのつり角度
 滑車装置
荷重と外力
 物体に作用する外部からの力を荷重といい、引張荷重や圧縮荷重等があります。力学において物体に作用する力を考える場合は、「外力」と「内力」を区別する必要があります。クレーンの構造部分には様々な荷重 (外力)が作用していますが、力の掛かり方よって荷重を分類することができます。力の作用を分布状態によって分類した場合は、狭い範囲に集中して作用する集中荷重と、 広い範囲に広がって作用する分布荷重に分けることができます。
集中荷重 分布荷重
 外力や内力、あるいは力のつり合いやモーメントは、一般に材料力学と呼ばれているもので、変形する物体を取扱うために使用されています。クレーンは、、どのような設計をすれば壊れないのか、どのような扱いをすると変形するのかという事柄が重要になります。これらの問題に答えを与えるものが材料力学で、機械の設計や使用に欠くことができないものです。材料力学という言葉は、材料と力学の合成語で、材料と力学の2つの分野の知識で成り立っています。
向きによる力 (荷重) の分類
力(荷重)を力の向きによって分けると、次のように分類することができます。
引張荷重
物体を引き伸ばすように働く荷重
例: クレーン等の巻上用ワイヤロープの直線部分に掛かる荷重
ガイデリックのブームの反対側のガイロープに掛かる荷重
ジンポールデリックのガイロープに掛かる荷重
玉掛用ワイヤロープの直線部分に掛かる荷重
圧縮荷重
物体を押し縮めるように働く荷重
例: 橋形クレーンの振脚に掛かる荷重
横行レール・走行レールが車輪によって受ける荷重
せん断荷重
物体を横からハサミで切るように働く荷重
例: 2枚の鋼板を締め付けているボルト、・リベット、キー等を荷重方向に切断しようとする荷重
曲げ荷重
物体を曲げるように働く荷重
例: ジブを曲げようとする荷重
ねじり荷重
物体をねじるように働く荷重
例: 動力を伝えるウインチの回転軸に働く荷重
組合せ荷重
 クレーン等の機械部分の多くは、引張荷重、圧縮荷重、曲げ荷重、ねじり荷重が複合的に組合されて働いています。
例: 動力軸 ……… 曲げ荷重とねじり荷重
クレーンガーダ ……… 曲げ荷重とねじり荷重
ジブ及びドラム ……… 圧縮荷重と曲げ荷重
フック ……… 引張荷重と曲げ荷重
ドラム部分のワイヤロープ ……… 引張荷重と曲げ荷重
シーブ部分のワイヤロープ ……… 引張荷重と曲げ荷重
スチフレッグデリックのステー ……… 引張荷重と圧縮荷重
力の掛かる速度による力の分類
力 (荷重) を力の掛かる速度によって分けると、次のように分類することができます。
静荷重
 静荷重は、力の大きさと向きが変わらない荷重で、死荷重と呼ばれています。力学において自重 (クレーンや材料そのもの自体の重さ)を考える場合、重力は物体に働く外力として作用しています。
例: クレーン本体の自重
荷をつり上げて静止している状態の荷重
動荷重
 動荷重は、力の大きさと方向が変化する荷重で、活荷重と呼ばれています。動荷重は、衝撃荷重と繰返し荷重に分けることができます。
1. 衝撃荷重
 つり荷を巻下げている時の急制動や玉掛用ワイヤロープが緩んでいる状態から全速で巻上げた場合は、つり荷よりも大きな荷重がワイヤロープに作用して切断することがありますが、このような荷重を衝撃荷重といいます。 衝撃荷重は、 ハンマーで物を叩くように急激な力が極めて短時間に加わる荷重で、本来の荷重よりも大きな力が作用します。
例: つり荷の巻上げ、巻下げ、停止等を急激に行った時に作用する荷重
2. 繰返し荷重
 繰返し荷重には、 荷重の向きは同じで荷重の大きさが時間と共に変化する片振り荷重と、荷重の向きと大きさが時間と共に変化する両振り荷重(交番荷重)があります。繰返し荷重は、静荷重よりも小さな力でクレーンの構造部分を疲労させて破壊させることがありますが、 このような破壊現象を疲労破壊といいます。
片振り荷重例: クレーンのワイヤロープやウインチの軸受等に作用する荷重
両振り荷重例: 歯車軸に作用する荷重
応 力
 物体に荷重が作用する時、物体内部にその荷重に抵抗してつり合いを保とうとする力が生じます。この内力を応力といい、応力は荷重に等しく、向きは反対になります。応力について考える場合は、図のように物体を仮想的に切断して2つの面を作り、内力の方向と作用している面の両方について考える必要があります。
応力の求め方
 応力には、引張応力、圧縮応力、せん断応力等があります。応力は、部材に作用する荷重を部材の断面積で除した単位面積当たりの力の大きさで求めることができます、応力の単位には、N/mmが用いられています。 ただし、曲げ応力やねじり応力の場合は、部材に荷重が均等に作用しないため、これらの応力は簡単に求めることはできません。
応力(N/mm)= 部材に作用する荷重(N)
部材の断面積(mm
【計算例】
 7cm×10cmの長方形断面の鋼材に14kNの圧縮荷重が作用する時の圧縮応力の求め方。
 応力の単位は、N/mmです。したがって、長方形の断面積をmmの単位で求め、圧縮荷重をNの値にして応力を求めます。
鋼材の断面積=70×100=7000mm2
鋼材の圧縮応力 14000 =2N/mm2
7000
材料の強さ
 引張荷重や圧縮荷重等の外力が物体に加わると、物体に変形が生じます。 引張荷重は、ゴムを伸ばしたような変形を生じさせます。圧縮荷重は、堅いボールを圧縮させたような変形を生じさせます。 物体の原型に対する変形の割合をひずみといい、引張荷重による引張ひずみや圧縮荷重による圧縮ひずみ等があります。材料の軸方向に荷重が加わって生じる変形量と元の長さの比を縦ひずみといい、イプシロン(ε)で表します。物体の元の長さをL1、変形量をLとすれば、ひずみは次の式で求めることができます。
ひずみ(ε) 物体の変形量L
物体の元の長さL
 材料の断片である試験片を材料試験機に掛け、徐々に荷重を加えてひずみを調べます。次の図は、応力とひずみをグラフで表したもので、「応力−ひずみ曲線」と呼ばれています。この図において、材料の試験片を静かにA点まで荷重を掛けて引っ張ると試験片は変形して伸びますが、荷重を加えるのを止めると元の長さに戻ります。 このように変形した材料が元に戻る性質を弾性といいます。
 変形量の小さい弾性領域内においての応力とひずみは比例し、荷重を取り除くとひずみは消失します。しかし、それ以上の荷重を加えてA点の弾性限度を超えた場合は、試験片は元に戻らず、変形が更に大きくなって荷重が最大のB点に達します。B点の荷重は、 この材料に掛けることができる最大の荷重で、 この値を試験片の断面積で除した応力を引張強さといいます。元に戻らなくなったひずみは、永久ひずみといいます。B点以降は、荷重を増加しなくても試験片の伸びは更に増大し、C点に達して切断します。
このB点の試験片が切断するまでに掛けられる最大の荷重を切断荷重 (JISでは破断荷重という) といい、材料によって決まった値を有しています。
軟 鉄 高張力鋼
容認応力
 クレーン等に実際に生じる応力を使用応力といい、 部材の変形や破壊に至らない安全と考えられる応力の最大値を許容応力といいます。この許容応力は、一般に次の式によって求めることができます。
許容応力 材料の基準強さ
安全率
 クレーン等の構造部分の部材は、変形や破壊が生じない範囲で使用しなければなりません。各部材に生じる応力は、荷重の大きさや作業状態によって変化し、衝撃荷重が作用することもあるため、応力を正確に把握することは極めて困難です。このため、クレーン等構造規格において使用条件、部材の性質、荷重の種類による許容応力の値を算出する計算式を定め、これをクレーン、デリック、移動式クレーンの設計の基にしています。