力のつり合い

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 古代エジプトのパピルス(植物性の巻物)に、死者の書と呼ばれるものがあります。死者の魂が肉体から離れて冥府の国に入るまでの過程が描かれていますが、中でも有名なのが心臓を天秤に掛ける死者の裁判の章です。そこには天秤の絵が描かれています。つり合いの法則は、紀元前200年頃に発見されましたが、今では科学、工学の基礎となる重要な法則となっています。

つり合い

 1つの物体に多数の力が働いても平衡が保たれて仕事がなされず、その物体が動かない状態である時、これらの力はつり合っているという。

 ● 1点に作用する力のつり合い

 次の図は、物体の質量WをF1、F2の力で引っ張った時の力のつり合いを示している。F1、F2の合力RがW(F)に等しい時、物体は静止する。1点に2つの力のRとFが作用してつり合っている時、2つの力の大きさは等しく、向きは互いに反対になる。

             

 ● 平行力のつり合い

 左回りと右回りのモーメントをつり合わせることを「平行力のつり合い」 という。1点に支えられた天秤が水平な状態で静止している時、支えた点の時計回りと反時計回りのモーメントは等しくなる。図のように質量の異なるW1とW2の天秤の端から支点までの水平距離をA、Bとすると、次の式の場合にモーメントは等しくなる。
 W1×A ×9.8=W2×B×9.8

             

 上記の式を展開すると、次の式で図の天秤のAとBの長さを求めることができる。なお、天秤の長さ(腕の長さ)を求める場合には、質量を力に換算する定数を用いる必要はない。

      

<例題 1>
 図のような天秤のAとBの長さは、上記の式を用いると簡単に求めることができる。ただし、天秤の質量は考えないものとする。この式を見て分かる通り、AとBの長さは、荷の質量の比によって求めている。

        

<例題 2>
 図のような天井クレーンの左右のランウェイが受ける力(kN)は、天秤の長さを求める方法と同じ方法で求めることができる。ただし、ガーダやトロリの質量は考えないものとする。

       

 ● 同一平面上で作用する多数の力のつり合い

 図のような天秤に多数の力が作用してつり合っている時、すべての力の合力、つまり、ある1点を軸とする左右のモーメントの和はゼロになるため、左回りと右回りのモーメントは等しくなる。この関係は、次の式で表すことができる。
 W1×A=W2×(L−C−A)+W3×(L−A)

         

<例題 >
 図のような天秤がつり合っている時のAの長さ(cm)の求め方。ただし、天秤の質量は考えないものとする。

          

 天秤のAの長さは、左回りと右回りのモーメントのつり合いによって求めることができる。天秤の長さは、センチやメートルの単位で示されているため、これらの単位を統一して式を解く必要がある。したがって、天秤の全長2mをセンチの単位にして解くことにする。

       
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