摩擦

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 摩擦は、物質間に働く現象です。この分野を扱う学問をトライボロジーといいます。トライボロジー(tribolcgy)は、摩擦、摩耗、潤滑のメカニズム等の学問領域で、ギリシア語で摩擦を意味するtribosが語源とされています。我が国においても、トライボロジーの学会が活動しています。

静止摩擦力

 机の上に置かれた物体にひもをつけて引っ張る時、物体を引っ張る力が小さい場合は停止したままだが、引っ張る力がある程度の大きさになると物体は動き出す。力を加えても物体がすぐに動き出さないのは、静止している物体の接触面に抵抗力が働いているからである。この物体の運動を妨げようとする力を「静止摩擦力」といい、静止摩擦力は動きはじめる瞬間が最大になる。この最大の摩擦力を「最大静止摩擦力」という。

             

運動摩擦力

 力を加えない限り、物体に摩擦力は働かない。水平面に静止している物体は、力を加えて動きはじめるまでは大きな力が必要だが、一端動き出すと、物体に加える力は小さな力でよい。運動している物体に働く摩擦力を「運動摩擦力」といい、最大静止摩擦力よりも小さい値になる。摩擦力は、接触面が滑らかなほど小さくなる。

            

摩擦の法則

 静止摩擦力及び運動摩擦力は、物体に作用する重力である垂直力に比例するもので、物体の接触面積の大きさは関係ない。摩擦の法則は、その経験則を見いだしたアモントンとクーロンの名を取り、「アモントン・クーロンの法則」と呼ばれている。物体の接触面に作用する垂直力と、最大静止摩擦力の比を「静止摩擦係数」という。垂直力とは、垂直方向に作用する力のことで、荷重や外力を指す。つまり、その物体の質量をいうものである。最大静止摩擦力と静止摩擦係数の関係は、次の式で表すことができる。

       

<例題 1>
 図のような水平な床面に置かれた質量200kgの物体を動かすために必要な最小の力(F)の求め方。ただし、接触面の静止摩擦係数は0.3とする。力の値を求める場合は、質量を力に換算する定数9.8を用いる。
 F=200×0.3×9.8=588N

          

<例題 2>
 図のような巻上げとブレーキが一体となったドラムで1tの荷をつる時、この荷を落下させないためのブレーキシューを押す最小の力(F)の求め方。ただし、静止摩擦係数は0.5とする。つり荷を静止させるためには、つり荷の質量とドラムの半径のモーメントに、物体の接触面に働いている静止摩擦力(F×静止摩擦係数)とブレーキドラムの半径のモーメントがつり合う必要がある。
 荷の質量×巻上ドラムの半径×9.8=F×静止摩擦係数×ブレーキドラムの半径
 巻上ドラムとブレーキドラムの半径は、モーメントでいう腕の長さである。この腕の長さは同じでなのでブレーキシューを押す最小の力は
 荷の質量×9.8=F×静止摩擦係数
     1×9.8=F×0.5
          9.8=0.5F
       F=9.8/0.5
        =19.6kN
※ 力を求める場合は、質量を力に換算する定数9.8を用いなければならない。

           

転がり摩擦力と滑り摩擦力

 摩擦は、物体が転がる時にも働く。球や円柱等が転がる時に働く摩擦力を「転がり摩擦力」 という。また、回転を伴わないで接触面に接しながら移動する時に働く摩擦力を「滑り摩擦力」という。転がり摩擦力は、滑り摩擦力と比較すると、数10分の1程度と非常に小さい。このため、転がり摩擦力を利用したボールベアリングやローラベアリン等の旋回支持体がクレーン等に使用されている。

斜面に置かれた物体のつり合い

 斜面に置かれた物体に作用する重力を垂直力と斜面に平行な力に分解した時、斜面に平行な力と斜面に対して垂直な力に摩擦係数を乗じた値の合力がF(物体を引っ張る力)とつり合った時、物体は停止する。物体がつり合った状態の時は、次の式が成立する。
 F=斜面に平行な力+(垂直力×摩擦係数)

           

<例題>
 図のように置かれた物体の質量によって生じる分力のうち、斜面に平行な力が5N、斜面に対し直角な力が6Nの時、斜面にある物体とつり合いを保つための力(F)の求め方。ただし、物体と斜面との接触面の静止摩擦係数は0.5とし、ロープの質量及び滑車部分の摩擦は考えないものとする。図のように斜面に置かれた物体とつり合うためのFの値は、次の式によって求めることがでる。
 F=斜面に平行な力+(垂直力×摩擦係数)=5+6×0.5=8N

                      
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