使用の制限

photo

 つり上げ荷重が0.5t以上2t 未満のデリックは、労働安全衛生法や施行令において、クレーン構造規格を具備するものでなければ、譲渡、貸与、設置してはならないと定められています。


使用の制限

 事業者は、デリックについては、厚生労働大臣の定める基準 に適合するものでなければ使用してはならない。
                             クレーン等安全規則第104条
 厚生労働大臣の定める基準とは、クレーン等構造規格をいうものである。本条は、つり上げ荷重が2t以上のデリックについて規定したものである。

検査証の備付け

 つり上げ荷重が2t以上のデリックを用いて作業を行う時は、当該作業を行う場所に当該デリックのデリック検査証を備え付けておかなければならない。
                             クレーン等安全規則第103条
 検査証を備え付ける場所とは、デリックの作業を行う作業場又は事業場の事務所等をいうもので、デリックの運転士が携帯する必要はない 。

巻過ぎの防止

 事業者は、デリックの巻過防止装置については、フック、グラブバケット等のつり具の上面又はつり具の巻上用シーブの上面とドラム、シーブ、トロリフレームその他当該上面が接触する恐れのある物(傾斜したジブを除く。)の下面との間隔が0.25m以上(直働式の巻過防止装置にあっては、0.05m以上)となるように調整しておかなければならない。事業者は、巻過防止装置を具備しないデリックについては、巻上用ワイヤロープに標識を付すること、警報装置を設けること等、巻上用ワイヤロープの巻過ぎによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
                         クレーン等安全規則第105条第106条
 本条の巻過防止装置を具備しないデリックとは、つり上げ装置にウインチを用いる方式のデリックをいう。したがって、現在使用されているデリックのほとんどは、巻過防止装置を具備しないものに該当する。

過負荷の制限

 事業者は、デリックに定格荷重を超える荷重を掛けて使用してはならない。事業者は、やむを得ない事由によりこの規定によることが著しく困難な場合において、次の措置を講ずる時は定格荷重を超え、第97条第3項(落成検査)に規定する荷重試験で掛けた荷重まで荷重を掛けて使用することができる。
1. あらかじめ、デリック特例報告書所轄労働基準監督署長に提出すること。
2. あらかじめ、第97条第3項(落成検査)に規定されている荷重試験を行い、異常がないこと
 を確認すること。
3. 作業を指揮する者を指名して、その者の直接の指揮のもとに作動させること。
 事業者は、荷重試験を行った時及びデリックに定格荷重を超える荷重を掛けて使用した時は
 その結果を記録して3年間保存しなければならない。
                              クレーン等安全規則第109条
 本条は、やむを得ない事由により特例の措置を講じる場合を除いて、デリックに定格荷重を超える荷重を掛けて使用してはならないと定めたものである。第97条第3項の落成検査の荷重試験で掛けた荷重とは、定格荷重の1.25倍の荷重をいうものである。異常がないことを確認するとは、デリックの構造部分、機械部分、電気部分、ワイヤロープ、つり具を点検し、異常がないことを確かめることをいう。荷重試験及び特例負荷を行った場合は、結果に応じて特例負荷後2年間は荷重試験を省略することが認められている。

傾斜角の制限

 事業者は、ブームを有するデリックについては、デリック明細書に記載されているブームの傾斜角(つり上げ荷重が2t未満のデリックにあっては、その設置のための設計において定められているブームの傾斜角)の範囲を超えて使用してはならない。
                             クレーン等安全規則第110条
 デリックのブームは、傾斜角が小さくなるほど定格荷重が小さくなる。定格荷重が小さくなると、過負荷によりデリックの倒壊を招くことがある。このため、デリックは定められた傾斜角を超えて使用してはならない。

搭乗の制限

 事業者は、デリックにより、労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならない。事業者は、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、デリックのつり具に専用の搭乗設備を設けて当該搭乗設備に労働者を乗せることができる。搭乗設備については、墜落による労働者の危険を防止するため、次の次項を行わなければならない。
1. 搭乗設備の転位及び脱落を防止する措置を講じること。
2. 働者に要求性能墜落制止用器具等その他の命綱を使用させること。
3. 搭乗設備を下降させる時は、動力降下の方法によること。
4. 労働者は、要求性能墜落制止用器具等の使用を命じられた時は、これを使用しなければならない。
                         クレーン等安全規則第112条、第113条
 作業の性質上やむを得ない場合とは、短期間で終了する小規模な臨時的な作業、代替の方法が確立されていない作業をいう。安全な作業の遂行上必要な場合とは、デリックを使用することによって、より安全な作業の逐行が期待できる場合をいう。要求性能墜落制止用器具等とは、墜落による危険性に応じた性能を有する安全帯等をいう。

労働者の立入禁止

 事業者は、デリックを用いて作業を行う時は、巻上用ワイヤロープもしくは起伏用ワイヤロ
ープが通っているシーブ又は取付部の破損により、当該ワイヤロープが跳ねる、又はシーブもしくはその取付部が飛来することによる労働者の危険を防止するため、当該ワイヤロープの内角側で、危険を生じる恐れのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
                             クレーン等安全規則第114条

り荷の下への立入禁止

 事業者は、デリックに係る作業を行う場合であって、次の各号のいずれかに該当する時は、つり上げられている荷(6の場合にあっては、つり具を含む。)の下に労働者を立ち入らせてはならない。
1. ハッカーを用いて玉掛けをした荷がつり上げられている時。
2. つりクランプ1個を用いて玉掛けをした荷がつり上げられている時。
3. ワイヤロープ等を用いて1箇所に玉掛けをした荷がつり上げられている時。ただし、荷に設
 けられた穴又はアイボルトにワイヤロープ等を通して玉掛けをしている場合を除く。
4. 複数の荷が一度につり上げられている場合で、その複数の荷が結束され、箱に入れられる等
 の固定をされていない時。
5. 磁力又は陰圧により吸着させるつり具又は玉掛用具を用いて玉掛けをした荷がつり上げられ
 ている時。
6. 動力降下以外の方法によって荷又はつり具を下降させる時。
                              クレーン等安全規則第115条
 デリックの作業は、原則として労働者をつり荷の下に立ち入らせないようにしなければならないが、つり荷の下にやむを得ない場合がある。本条は、如何なる場合であっても、労働者の立入りを認めないものについて規定したものである。つり上げられている荷の下には、荷の直下及び荷の振れや回転する恐れのある直下が含まれる。ハッカーは、先端が爪の形をしたもので、荷の端に爪を引っ掛けて使用する。動力降下以外の方法とは、自由降下による方法いうものである。

                
              ハッカー                       アイボルト
             
        横吊クランプ    縦吊クランプ

暴風時の措置

 事業者は、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹く恐れのある時は、屋外に設置されているデリックについて、ブームをマスト又は地上の構造物に固縛する等ブームの動揺によるデリックの破損を防止するための措置を講じなければならない。
                             クレーン等安全規則第116条

強風時の作業中止

 事業者は、強風のためデリックに係る作業の実施について危険が予想される時は、当該作業を中止しなければならない。
                           クレーン等安全規則第116条第2項
 強風とは、10分間の平均風速が10m/s以上の風をいう。デリックに係る作業に危険が予想される時とは、風の影響によってつり荷に振れや回転が起こり、労働者に危険を及ぼす恐れがある時、定格荷重の荷をつり上げる作業中に荷の作業半径が風圧で増大し、定格荷重を超える荷重が掛かる恐れがある時をいう。デリックは、機体の構造や荷の形状によって風の影響による危険度が異なるため、個々の作業によって適切な判断を下すことが大切である。

運転位置からの離脱の禁止

 事業者は、デリックの運転者を荷をつったままで、運転位置から離れさせてはならない。クデリックの運転士は、荷をつったままで、運転位置から離れてはならない。
                             クレーン等安全規則第117条

組立て等の作業

事業者は、デリックの組立て又は解体の作業を行う時は、次の措置を講じなければならない。
1. 作業を指揮する者を選任して、その者の指揮のもとに作業を実施させること。
2. 作業を行う区域に関係労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やす
 い箇所に表示すること。
3. 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想される時は、当該作業
 に労働者を従事させないこと。
事業者は、作業を指揮する者に次の事項を行わせなければならない。
1. 作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業を指揮すること。
2. 材料の欠点の有無並びに器具及び工具の機能を点検し、不良品を取り除くこと。
3. 作業中、要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。
                             クレーン等安全規則第118条
 作業を行う区域の関係労働者とは、当該作業に従事する労働者、当該作業のための材料の運搬又は整理を行う労働者、作業の指示又は連絡等にあたる労働者をいう。

ページトップへ

crane-club.com

Copyright crane-club 1999 All Rights Reserved.